シミュレーション
基本アクティビティ6 「シミュレーション」-擬似体験を通じて考える
「シミュレーション」とは
ある事象をモデル化、単純化して、それを擬似的に体験することをシミュレーションという。開発教育の中では、ある事象を擬似的に体験することで、問題を明らかにするとともに、学習者がそれを“実感”として認識するための有効な手段として、シミュレーションが使われている。
「シミュレーション」の効果
たとえば開発教育協会と(財)神奈川県国際交流協会が協同で制作した『新・貿易ゲーム』が参加体験型の学習方法として優れているのは、「教えられる」「やらされる」のでなく、「思わず夢中になってしまう」こと。作業を通して、豊かさや貧しさを「実感」すること。そして最後に、現実の世界の出来事と照らし合わせてみて、「南」の国の貧困や環境破壊が、先進国で豊かな生活を送っている自分自身の行動に起因しているということに自ら「気づく」というところにある。
進行役(ファシリテーター)の注意点
1.よく練られた教材と最新の情報を用意すること
シミュレーションは、自由なディスカッションの“ネタ”を与える方法として非常に有効であるが、その教材がしっかりしていないと、現実とのかい離が大きくて、議論が意味をなさなくなることがある。 自分でシミュレーション教材をつくる際には、それが単なるゲームになってしまわないよう、対象となる問題を十分に研究した上で取り組む必要がある。
2.本当に有効な場面で行うこと
シミュレーションがいくら面白いといっても、何もかもシミュレーションを通して学ぼうとすることには無理がある。その手法の性格上、どうしてもかなりの時間がかかることは避けられないので、結果として導き出された「答え」があまりに単純な場合や、その後の議論の役に立たないような場合、「この程度のことを知らせるために、こんなに面倒な作業をやらせたのか」という反発を招くことすらあるから、注意が必要だ。
3.関連する情報を集めておくこと
シミュレーションによって導き出される議論は、しばしば予想以上に幅広い展開を見せる。そのとき、進行役には、そこで扱われている問題の背景や関連することがらについて、十分な知識(情報、資料)を持っていることが求められる。 シミュレーションでモデル化されている事柄が、現実の世界ではどのようにして起こっているのか、実際の場面では他にどのような問題が起こり得るのかなど、進行役が情報を提供することで、参加者の議論はさらに深まっていく。逆に、情報が乏しいと、議論はあくまで想像の域を出ず、参加者は確かなものを得られないままに終わってしまう。 もちろん、参加者の中にも、いろいろな知識、経験を持った人がいるので、進行役は、そうした資源をうまく引き出し、全員で共有しながら議論を進めることが重要である。
4.すべてを説明することはできないと知っておくこと
シミュレーションは、無数の要素が複雑に絡み合った現実のできごとの中から、いくつかの特徴的な要素を取り出して、いわば“人工的”にそれを体験するものだ。したがって、関連するすべてのできごとをひとつのシミュレーションで説明しようとすることには、やはり無理がある。 他の学習方法と組み合わせ、いろいろな角度から問題を掘り下げていってはじめて、シミュレーションも生きてくるのだ。
基本的な11のアクティビティ
1.部屋の四隅 | 2.ブレインストーミング | 3.ランキング | 4.ディベート |
5.フォトランゲージ | 6.シミュレーション | 7.ロールプレイ | 8.プランニング |
9.イメージマップ | 10.タイムライン | 11.ゲーム | みんなの参加 |
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