DEAR 開発教育協会

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もっと詳しく!-「開発教育」と「参加型学習」

学習過程の重視

方法の重視-学習結果よりも学習過程を重視する

開発教育では、そのねらいや内容だけでなく、方法を重視するところに一つの特徴がある。

「方法はメッセージをもつ」という言葉があるが、たとえば教室で、「人権は大切である」というメッセージが学習内容として学習者に提示されたとする。しかし、もしその方法(学習形態だけでなく、教室の雰囲気や教師と生徒の関係などを含む)が学習者の人権を無視したようなものであれば、その方法自体が、内容と異なるメッセージを投げかけ、学習者は矛盾する二つのメッセージを同時に受け取ることになる。

そのような場合、その学習成果は決して期待できるものでないことは明らかだ。つまり教育の方法は、本来そのねらいや内容と一致したものであることが求められるわけである。

また、学習結果よりも学習過程を重視するという開発教育の特徴も、その方法を重視する理由の一つだと言える。

開発問題の解決には特定の正解があるわけではない。だから、学習者は提示された正解をただ覚えればよいというものではなく、学習者と指導者が共に話し合う中で、その現状や原因を理解し、解決方法を考えていくことが重要だ。そのような過程の中での学びを生み出すためにも、その過程自体を約束する学習方法が重視されるのである。

なぜ参加型学習?

参加型学習の重視-「参加」を一つの目標とする教育活動

上記のように、開発教育では、その方法が重視されるが、特に「参加型学習」と呼ばれる学習方法が活用されている。
では、なぜ「参加型」なのだろうか。

開発教育は、「開発をめぐる問題を克服するための努力や試みを知り、それに参加できる能力と態度を養うこと」、また「共に生きることのできる公正な地球社会づくりに参加すること」といった文言に示されるように、「参加」を一つの目標とする教育活動だ。 「参加型」の学習方法を重視するのは、上述した目標と方法の一致という視点からも、また学習過程の重視という視点からも、当然のことだと言える。

参加型学習の多様な手法-知識や経験、個性や能力を引き出す

ではこの参加型学習とは具体的にどのように展開されるのだろうか。

参加型学習を「学習者が、単に受け手や聞き手としてではなく、その学習過程に自主的に協力的に参加することをめざす学習方法」と捉えるなら、そのためにはいろいろな手法を取ることができる。たとえば、発表・対話・実験・見学・調査・スタディツアー・ワークキャンプなどがそうだ。

また、教室という狭い限られた空間でも、比較的手軽で、学習者の学習過程への参加を促しやすい手法として生み出されたものが、ディベート、ランキング、フォトランゲージ、シミュレーション、ロールプレイ、プランニングなどの手法である。これらの手法については、この冊子の中で具体的な事例と共に詳しく紹介している。

いずれの手法にも共通する基本的な特徴は、学習者の緊張を解き、その場の雰囲気を和ませる中で、学習者が持っている知識や経験、個性や能力を引き出し、相互の意見交流や相互理解を促進すること、そしてその過程で学習者が新しい発見をしていくことを重視していることが指摘できる。

参加型学習以外の手法

このように開発教育では参加型学習が重視されるが、もちろん参加型学習しか方法がないということではない。

講義・講演・読書などを通して知識を獲得することはその目標から見ても大切なことだ。 また、たとえ講義形式を取ったとしても、そこでの話し手と聞き手の関係やその場の雰囲気などによって、知識の獲得だけにとどまらず、学習者が大きな刺激や感動を受け、参加への意識が高まるということもある。

また、参加型学習も他の学習方法と関連づけられることによってその特徴が生かされてくるとも言える。 したがって、参加型学習は、開発教育がめざす社会づくりへの参加のための一つの学習方法なのである。

ファシリテーターとは

参加型学習における教師や指導者の役割

参加型学習での教師や指導者の役割は、知識詰め込み型学習での役割と大きく異なる。 そこでは、学習者ひとりひとりが、それぞれ異なる経験・知識・意見などをもっていることを尊重し、それらを引き出し、対話を生み出し、相互の学び合いを促進する役割が求められる。 参加型学習では、教師や指導者のことを「ファシリテーター(促進者)」と呼ぶのはそのためである。

とは言え、この「ファシリテーター」は、学習者間の対話を生み出すために一歩下がり、まさに司会者のような「進行役」に徹する、というわけではない。 対話を生み出すきっかけづくりとして、いくつかの手法を活用し、学習者の意見を引き出しながらも、対話を通した学び合いに自分も参加し、必要に応じて自分の意見や立場を示していくことが求められる。 まさに対話の過程では、参加する者は常に対等な関係にある。

また、「参加型学習は楽しい」ということをよく耳にするが、この楽しさも「ファシリテーター」の関わり方でその意味は大きく異なっているようだ。 その楽しさを、打ち解けた雰囲気が生み出す楽しさにとどめるのではなく、学習者が自分と現実世界との関わりに気づく中で、自分がその世界に主体的に関われる楽しさ、またその世界の変革や創造に参加できる楽しさにしていくためには、「ファシリテーター」は、参加者の経験を引き出しつつ、学びを現実感あるもの、未来につながるものにしていくことが必要だ。

そのために「ファシリテーター」自らの経験や問題意識が問われるのは当然のことである。 したがって、参加型学習の手法を学んだからと言って、「ファシリテーター」の役割を担えるとは限らないのである。 本冊子で紹介するいくつかの手法は、あくまでも「参加型学習へのヒント」であり、また「ファシリテーターになるためのヒント」でもあることをご理解いただきたい。

基本的な11のアクティビティ

1.部屋の四隅2.ブレインストーミング3.ランキング 4.ディベート
5.フォトランゲージ6.シミュレーション7.ロールプレイ8.プランニング
9.イメージマップ10.タイムライン11.ゲーム みんなの参加

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