パーム油のはなし-地球にやさしいってなんだろう?
概要
「身近なものから世界とのつながりを知る」開発教育を代表する定番・ロングセラー教材
- 制作・発行:開発教育協会
- 2018.10(改訂版/2002年初版)、A4版40ページ
- 付録:写真10枚(A4カラー)
- ダウンロード資料:紙芝居、すごろく、スライド資料
- 一般価格:本体¥2,000(税込¥2,200)/図書館価格¥4,000(税込¥4,400)
- 会員価格:本体¥1,600(税込¥1,760)
- 対象:小学校高学年以上
- この教材は教材総合カタログに掲載されています
ポテトチップス、チョコレート、カップラーメン、アイスクリームなどの原料になっているパーム油を通して、生産国で起こっている問題を知り、その問題の構造を理解し、さらに私たちの消費社会とのつながりを理解し、何ができるかを考えることをねらいとしています。大量消費・大量生産のライフスタイル、グローバリゼーション、プランテーション開発、先住民族、熱帯雨林、児童労働など、さまざまなテーマで学習することができます。
2018年改訂版について
2002年に発行された初版から7回目の改定・増刷版です。2016年の改訂版からは、データを更新したほか、SDGsについて加筆し、ユースが参加できるグループの紹介も加えました。付録は写真セットのみとし、紙芝居とすごろくはウェブサイトからダウンロードして利用いただけるよう、体裁を変更しました。また、新たに、ダウンロードしてご利用いただけるスライド資料を作成しました。
※付録資料のダウンロードには教材に掲載のパスワードが必要です。
なお、2014年・2016年の改訂版をお持ちの方は、そのままご利用いただいて支障はありません。それ以前の版をお持ちの方は、データが大幅に更新されていますので、新しい版をご利用いただくのがおすすめです。
2015年消費者教育教材資料表彰「優秀賞」を受賞
この教材は、消費者教育教材資料表彰の「優秀賞」を受賞しました。この賞は、(公財)消費者教育支援センターが主催するもので、教育現場で役立つ優秀な教材を表彰することで、学校における消費者教育の充実・発展に寄与することを目的に実施されるものです。(2015-5-29)
※賞については(公財)消費者教育支援センターのウェブサイトをご覧ください。
審査員コメント
- 指導案や指導のポイントがよくまとまっており、授業に取り入れやすい。使い方によって、1年間この教材で授業ができるほど充実している。
- 「地球にやさしい」という意味が環境破壊だけでなく「地球に生活する者、物、すべての生活」に対してであり、単純なことではないということをしっかり学ぶことができる。
- 子どもの心をつかみ面白い授業が提供されるだろう予期を持たせる教材として、優れている。情報は量も内容もよく、教員の多くが満足を示している。
ねらい
パーム油は、主にマレーシアやインドネシアでプランテーションという形で作られています。日本では主として食用に使われています。また、パーム油は天然の植物性油脂なので、日本では「地球にやさしい」というイメージのもと、洗剤や石鹸にも使われています。しかしパーム油は、本当に「地球にやさしい」のでしょうか?
生産国においては、非常に多くの問題が起こっています。マレーシアのボルネオ島サラワク州では、森林の伐採による熱帯雨林の減少や、先住民族の生活環境の破壊が深刻になっています。また、マレー半島においては、子どもを含めた労働者が何世代にもわたるプランテーション内のみの生活を強いられています。もちろんこの問題は、パーム油消費を止めることで改善されるような単純なものではありません。歴史的、文化的、構造的な問題が複雑に絡まっています。
パーム油をめぐる問題を理解することは、SDGs(持続可能な開発目標)の成立の背景と意義を理解することにも役立ちます。このままでは「続かない(持続不可能な)」社会を、どうしたら「続く(持続可能な)」社会に変革していくことができるでしょう。
解決方法はまだ見つかっていません。しかしながら、パーム油生産国の問題を知ること、そして私たちの消費生活をふりかえることが、解決の糸口になるかもしれません。
この教材が、生産国の人々や環境に思いをはせ、本当に「地球にやさしい」とはどういうことなのか、を考えるきっかけになることを願っています。
もくじ
各教材は基本的に単独で利用できるようにしてあります。それぞれの場と時間に応じて、組み合わせて利用できます。
教材1 「私たちの生活とパーム油」
パーム油を原料とした商品が私たちの身の回りにたくさんあることに気づくとともに、パーム油についての基礎的な知識を得ましょう。
クイズ1 世界で/日本で最も多く使われている植物油脂は?
クイズ2 日本に輸入されるパーム油はどこの国のものが多い?
クイズ3 日本に輸入されたパーム油は何に一番多く使われている?
クイズ4 パーム油はなぜ多くの製品に利用されているのでしょう?
<解説>
1 日本と世界の植物油脂(世界の植物油脂、日本の植物油脂)
2 パーム油について(パーム油とは、プランテーションでの生産、世界のパーム油、日本のパーム油)
表 パーム油の使用用途の内訳
パーム油のはなし教材2 「サラワクの森の恵み」
ユニット1 熱帯雨森(クイズ/解説資料/コラム/フローチャート)
ユニット2 油ヤシ農園開発についての関係者会議(ロールプレイ/所要時間:90分)
ユニット3 熱帯林を必要以上に破壊しないためにできること
<クイズ>
クイズ1 カカオ・バナナ・天然ゴム・合板・医薬品に共通することは何でしょう?
クイズ2 熱帯雨林はどんなところに分布しているでしょう?
クイズ3 熱帯雨林の樹木の高さは、高いものでどのくらいになるでしょう?
クイズ4 熱帯雨林のおよそ3%を占める熱帯雨林には、どれくらいの生物種がいるでしょう?
クイズ5 現在、熱帯雨林は減少しています。1分間にどのくらいの熱帯雨林が消失しているでしょう?
クイズ6 このまま熱帯雨林の破壊が続けば、2025年までにどのくらいの種が絶滅の危機にさらされるでしょう?
<コラム>
コラム1 東南アジアの熱帯林を消費してきたニッポン
コラム2 熱帯雨林は私たち人類にとって必要不可欠の財産である
コラム3 伝統的な焼畑農業について
コラム4 分かち合いの文化~先住民族の生活
教材3 「プランテーションの子どもたち」
ユニット1 私の生活・私の人生(ワークシート)
ユニット2 ミーナの暮らし(すごろく)
ユニット3 児童労働と私たちの生活(ワークシート)
<解説> 油ヤシプランテーションにおける労働の問題点
パーム油のはなし (1)給与 (2)農薬と女性 (3)移民労働者 (4)児童労働
<コラム>
コラム5 児童労働が貧困をもたらす!?
教材4 「地球にやさしいってなんだろう」
ユニット1 パーム油をめぐる問題の整理(ブレインストーミング)
ユニット2 私たちにできること(ランキング)
<コラム>
コラム6 日本の企業・政府に対してできること
付録・スライド
付録資料のダウンロードには教材(2018年改訂版)に掲載のパスワードが必要です。
付録1 写真教材10枚(撮影:峠隆一)
写真は教材に同梱されています。
- 写真1 油ヤシの果房・油ヤシの実と種
- 写真2 サラワクの森
- 写真3 皆抜された森(サラワク)
- 写真4 プランテーション開発(サラワク)
- 写真5 油ヤシの収穫
- 写真6 トラクター
- 写真7 先住民族プナン人(サラワク)
- 写真8 先住民族イバン人(サラワク)
- 写真9 児童労働(マレー半島)
- 写真10 プランテーション労働者(マレー半島)
付録2 紙芝居「ミーナの1日」(11枚セット)
プランテーションで働く女性「ミーナ」の生活と労働の実態を知る紙芝居です。
※改訂版第2版(2016年)までは教材に同梱しています。
付録3 すごろく
すごろくのシート(A3横サイズ)と「説明カード」(A4縦両面)がセットになっています。
※改訂版第2版(2016年)までは教材に同梱しています。
スライド資料
適宜編集してご利用ください(Microsoft Power Pointフォーマット/38頁)。
※2018年改訂版に対応しています。
実践レポート・動画
教材をつかったワークショップの動画を観る
実践レポートを読む
北海道札幌市の円山動物園で「パーム油問題を学び、円山動物園での教育プログラムを考えるワークショップ」(2024年9月21日)
「植物油のことも、パーム油のことも、マレーシアの動物たちへの影響も全然知らなかった。こんなに重要な問題なのに、ニュースでも見ないし、話題にもならない。世界に知らせたいと思った」
「ワークショップは『めっちゃガチ』だと思っていたけど、参加してみたらすごく楽しかった。お菓子も出てきて、普通に食べてたら、それもパーム油だった。悲しい現実だけど、知ることができて良かった」
https://note.com/ngodear/n/n54e87b824ba7?sub_rt=share_pw
都立高校で「パーム油のはなし」ワークショップ(2020年1月・東京)
参加者が大勢だったためロールプレイをお芝居仕立てで実施しました。
「知らない、興味ない、というのは一番よくないと思った。身近なモノでも調べてみたい」
「人間が「よりよい」ものをつくるとき、自然環境が「より悪い」事態になっていることを改めて知った」
https://dearstaff.blogspot.com/2020/02/blog-post_7.html
日清食品で「パーム油のはなし」ワークショップ(2019年1月・東京)
「 環境だけでなく、人権にもかかわる重要な問題を知ることができました 」
「 日本(世界)企業も原産地の環境問題への意識を高めていくべきだと感じた」
http://dearstaff.blogspot.com/2019/02/blog-post.html
高校1年生を対象にしたワークショップ(2017年6月・神奈川)
「普段買っている商品の裏にこういう問題があることを初めて知った」
「企業と農家が対等になれない原因は、私たち(消費者側)にもある」
http://dearstaff.blogspot.jp/2017/07/blog-post.html
総合商社で広報・CSR担当者対象の研修会(2016年2月・東京)
「身近なモノから世界を知るSDGsワークショップ」と題して実施
http://dearstaff.blogspot.jp/2016/02/blog-post.html
フリースクールでのワークショップ(2014年10月・神奈川)
ロールプレイを7人のお芝居形式の「パーム油劇場」で
http://dearstaff.blogspot.jp/2014/12/3.html
ESDイベントでのワークショップ(2014年1月・愛知)
ロールプレイでは真剣に自分の役のセリフを読み、盛り上がっていた雰囲気がしん、となり、皆さん役になりきって取り組んでいました。
http://dearstaff.blogspot.com/2014/01/esdin.html 高校生対象のワークショップ(2013年6月・神奈川)
高校生対象のワークショップ(2013年6月・神奈川)
「お菓子の原材料名などで植物油脂という表示は見たことがあったけれど、
このような問題があるとは知りませんでした」
http://dearstaff.blogspot.com/2013/06/blog-post_28.html
医療・薬学系の専門学校生対象のワークショップ(2013年3月・東京)
ふりかえりシートを読んでいたら、シートの裏側に独創的な提案が…!
http://dearstaff.blogspot.com/2013/03/blog-post.html
高校生対象のワークショップ(2011年12月・神奈川)
「いろいろなものの犠牲の上で私たちの生活があると思った。もっと世界のことを学びたい」
「パーム油の問題は初めて知ったが、とても複雑。まずは身近な人にこのことを知らせたい」
http://dearstaff.blogspot.com/2011/12/blog-post_26.html
高校での授業の結果は‥(2011年10月・岡山)
生徒たちが学んだこと・伝えたいことを紙芝居やパネルにして、街中で発表!
http://dearstaff.blogspot.com/2011/10/blog-post_26.html
ご注文方法
- DEARの本は直販のみです。書店などには置いておりませんので(取次を通していません)、 DEARまでウェブ、ファクス、お電話にて直接ご注文ください。 詳しくはこちらのページをご参照ください。
- DEAR事務所(東京都文京区)で直接ご購入いただくことも可能です。来所の際は事前にご連絡ください。
- 教材総合カタログ(ヒルマ/スクラボ/PLUS)で一部の教材をご注文いただけます。詳しくはこちらのページをご参照ください。
実践に役立つリソース
動画
ランタンの物語(アニメーション)
国際環境保護団体「GREEN PEACE(グリーンピース)」が作成した動画。オランウータンの「ランタン」と女の子の会話から、パーム油の生産地で起こっているできごとを知ることができます。日本語ナレーションはタレントのベッキーさんが担当しています。1分30秒で手軽に観ることができます。
What’s Palm Oil?(パーム油って?)
イギリスのマスメディアBBC制作の動画。プランテーションの様子、野生動物の状況、森林火災など、コンパクトに情報がまとまっています。1分30秒で手軽に観ることができます。
メガバンクの闇を暴く パーム油 サプライチェーンに潜む人権侵害
Fair Finance Guide Japan(フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパン)制作の9分35秒の動画。 児童労働を含む人権侵害が報告されたインドネシアのパーム油農園。ところが、日本のメガバンクはこの農園の親会社への融資を続けている。
Have a Break?(ハブ・ア・ブレイク?)
※英語(グロテスクな表現が含まれます)
国際環境保護団体「GREEN PEACE(グリーンピース)」のUK(英国)が作成した動画。2010年に世界最大の食品・飲料会社のネスレグループに対して、インドネシアの森林破壊につながるパーム油を買わないように訴えたキャンペーンビデオ。公開から2か月間で合計150万回以上も再生され、世界中から30万通を超える消費者のメッセージがネスレに届くことに。2か月後にネスレは、森林破壊をしてつくられた原料を使用することをやめ持続可能な原料に切り替えるとの調達ポリシーを発表しました。
市民やNGOの取り組み
国際環境保護団体「GREEN PEACE(グリーンピース)」によるキャンペーン
2010年の「キット、熱帯雨林もブレイクできる!」キャンペーンにより、食品大手企業ネスレは、森林破壊を助長する生産方法で製造されたパーム油を購入しないと決定しました。このキャンペーンには34カ国から30万通以上の市民が賛同メッセージを寄せました。
ウェブサイト「プランテーション・ウォッチ」
6NGO(メコン・ウォッチ、FoE Japan、地球・人間環境フォーラム、熱帯林行動ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部、サラワク・キャンペーン委員会)が共同で作成したプランテーションに関する情報サイト。油ヤシ・プランテーションについても豊富な情報が掲載されている。
あぶない油―パーム油のことを知るサイト
プランテーション・ウオッチが運営するサイト。パーム油を使用している食品についてメーカーに問い合わせをした結果を公表している。
NGO作成の資料
NPO法人 アジア太平洋資料センター作成 『パームオイル 近くて遠い油のはなし』
油ヤシのプランテーション内の様子など、貴重な映像が含まれたオーディオ・ビジュアル教材。パーム油に関する添付資料も充実している。資料はウェブサイトからダウンロードできる。
NPO法人FoE Japan作成 『森の慟哭(どうこく)』
パーム油と熱帯林、サラワクの森と私たちの密接なつながりについてまとめられたドキュメンタリーDVD。データやインタビューをふんだんに盛り込んで、先住民族の森の利用やくらし、それをとりまく開発の状況などを活き活きと紹介している。
シリーズ2「知る・考える・やってみる!熱帯林とわたしたち」
人気教材のシリーズ2ができました
森林減少、生物多様性、気候変動、そして、消費に焦点を当て、「持続可能な社会」と「アクション(行動)」を学ぶことができます。高校生が撮影した写真やエッセイを使っているほか、新聞記事を使いながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と熱帯林のつながりを考える授業案も収録しています。
『パーム油のはなし』とはワークや切り口が重複していませんので、両方併せてご利用いただくもおすすめです。→ 詳しくはこちら。
- 発行:開発教育協会、プランテーション・ウォッチ
- 2020年7月、A4版48頁
- 付録:写真9枚(A4カラー)
- 一般価格:¥2,000+税 会員価格:¥1,600+税
- 対象:小学校高学年以上
教材の著作権について
- 教材・書籍等の著作権は開発教育協会に帰属します。著作権法上の例外を除いて、教材・書籍等の全部または一部を無断で複製したり、転写・引用・入力などしないでください。
※著作物が自由に使える場合(文化庁)http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html - ワークシート等の複写による利用は、学術的な調査研究、「非営利」の教育・学習活動に限ります。例えば、学校の先生が、授業で使うためにコピーを作って児童や生徒に配布することは「著作権法上の例外」なので、問題ありません。
- 教材・書籍等を利用して、非営利目的の講義や参加型学習プログラムを実施する際には、事前の広報資料や当日の配付資料、事後のレポート等に、使用する著作物の著作権者が当会であることを明示してください。印刷物やウェブページには、例えば、「当研修/講座で使用する教材/テキストは、開発教育協会(DEAR)発行の教材です。詳細はhttp://www.dear.or.jp/を参照してください。」等の表記をしてください。