DEAR 開発教育協会

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食卓を一緒に囲んだら~世界の食文化 in 大田区民大学(2009年2月)

食の違いは、文化の違いにも通じています。食の違いを通して、対立が生まれる原因を理解し、それをどうやって克服するか、参加型学習の一つであるグループ討議を通じて考えてみます。

  • 実施日 2009年2月10日(火) 1時間30分
  • 対象者 大田区民大学 多文化共生・国際理解講座 参加者約20名
  • ねらい
    ①世界の食文化の多様性にふれる。
    ②「違い」をめぐる様々な気持ちに気づき、そのためにどんな対立や葛藤が起きるかを認識する。
    ③多文化への理解を深め、共生の途を模索してもらう。
  • 企画・実践者 西あい(開発教育協会)、アシスタント(開発教育協会)1名
  • 関連資料 『地球の食卓』(TOTO出版)

1.グループ分け - 多様な参加者とともに

※写真はイメージです(タイの農村)

6か国のそれぞれを代表するような家庭の、家族全員とその家族の一週間分の食料を撮った写真を6つの机の上に置きます。参加者は、6つの机に置かれた写真を見て周り、興味を持った写真、これから討議をしてみたいと思った写真の置かれた机の周囲に座って一つのグループを形成します。

参加者は子どもを託児所(会場に併設)に幼児を預けている母親から、第一線を退いた60~70代の男性まで幅広い方々でした。ほとんどの参加者は、同じ区民大学のコースに出席しており、2週間前には、参加型のグループ学習を経験していましたので、意見の合いそうな人同士、話のし易そうな人同士が固まることを懸念していましたが、特に固定メンバーが集まっているようではありませんでした。年配の男性で、固定観念を強く持っているのではないかと懸念される参加者もいましたが、実際にはグループ編成はスムーズに進み、彼を含むグループでも自由・闊達な討議が進められていました。また、目の不自由な方、耳の不自由な方も参加していましたが、それぞれに補助者がついていましたので、彼等も積極的に討議に参加していました。

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2.フォトランゲージ - 写真から読みとろう

※写真はイメージです(タイの農村)

各グループに大きな白紙と筆記具を配り、次のグループ作業を開始。

  1. 各グループの机の上に置かれた写真に写っているものを、できるだけたくさん書き出す。
  2. 気づいたこと、関心を持ったことを書き出す。
  3. 自分の食文化と、同じところ、違うところを挙げ、書き出す。(グループ討議開始、15分後くらいに、日本の家族、食料の写真を配布)
  4. さらに、そこに自分が暮らすとしたらどうか?について討議する。併せて、どんな地域にある国かを討議する。
この作業を20分ほど続けたのち、グループごとに代表者が上記の作業の結果を報告。これを聞くと、ずばり国名を挙げているグループ、東南アジア、アフリカなどの地域を指定するグループがありました。参考の為に、黒板に世界地図、教室で使用する大きな掛図式の世界地図を置きましたが、国名などを調べているグループもあり、有効な備品と思われます。開発途上国の食料が地産地消の傾向のある野菜、魚類、肉類であるのに対し、アメリカのような先進国では、ほとんどが箱詰め、缶詰などの加工品を食べていることが分かり、参加者はそれぞれがおぼろげに持っていた概念を確認し、その違いの大きさに改めて驚いたようでした。各グループでは、こういう違いがどんな理由(地勢、気候、宗教、生活習慣、経済レベルなど)で生じているのか、ほとんど自発的に議論していました。

 フォトランゲージとは?

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3.ロールプレイ - ある教室でのできごとを見て

※写真はイメージです(タイの農村)

通常は、参加者の中からボランティア2名を募り、学校での弁当をめぐる揉め事の寸劇を演じてもらいますが、今回は、大田区民大学の担当者と、このワークショップに開発教育協会からアシスタントとして参加していたメンバーが演じました。揉め事の発端は、ベトナムから日本に来た家族の一員である子どもが、ベトナムでは調味料として一般的なニョクマム(魚醤)で味付けをした、母親手作りのベトナム料理を弁当に持ってきたことから始まります。この子が自分の好きな食べ物を食べられると思って弁当箱を開けた途端、普段嗅いだことのない匂いが教室中に広がります。この匂いに耐え難くなったひとりの子が、ベトナムの子のところに来て猛烈に抗議し、罵倒します。ベトナムの子は抗弁しますが、支持者もないので仕方なく1人で屋上で食べると言い出すところで寸劇は打ち切られます。

この寸劇を見て、参加者は何を感じたかを数人に聞きます。同時に、この寸劇を演じた人にも、演じながら何を感じていたかを聞きます。ベトナムの子どもへの同情がある一方、いやな匂いは堪らないという意見も多く、どうすべきか参加者は悩んでいました。

食べ物に限らずに、似たような経験を持つ人に経験談を話してもらいました。タバコの匂いに耐えられないといわれたケース、珍味である「クサヤの干物」を腐っている食べ物といわれたケース、男性年配者が加齢臭を気にしだしていること、外国旅行に出て1週間もすると醤油が恋しくなることなどの経験談が発表され、同情を買ったり、苦笑されたりでした。

つづいて、対立や葛藤、問題がなぜ起こってしまうのか、どういう対応をすべきかについてグループ討議を行ないました。その後、最初の寸劇に戻り、別の対応方法がないか募ったところ参加者の1人が手を上げ、「自分は君がどんな暮らしをしているのか、どんなものを食べているのか知りたいので、君の家に遊びに行きたい」という対応方法を披露し、拍手喝采を浴びました。習慣・風習の違いは交流を深めることで徐々に理解し合えるようになるという一つの前向きな問題解決法を提示してくれたと思います。

 ロールプレイとは?

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4.ケーススタディとふり返り - 自分ならどうする?

ある小学校の先生から、外国人の子どもがクラスにいて、母親から「子どもが宗教上の理由で○○が食べられないので、給食は食べずに弁当を持たせたい」と要望され、何をどうすればよいのかアドバイスを求められている、というケースを提示しました。今回は、ケースをプリントしたものを配布し、ファシリテータが音読しました。
各グループで、この問題や、アドバイスの方法を討議してもらい、その結果を発表してもらいました。

報告されたアドバイスの例

  • 弁当を持ってくる理由を、クラスの全員に説明する(本人の言葉で説明してもらうという意見もありました)。
  • 日本では給食が一般的であること、給食の利点を母親に理解してもらう。
  • 前もって献立表により、その外国人の子どもが宗教的な理由で食べられない献立がある日を確認し、その日に限り母親は弁当を持たせ、先生は、その理由をクラスの子どもたちに説明する、など。
今日の活動で気づいたことをグループで整理してもらいました。
これにつづき、参加者に感想の記入を依頼しました。

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5.参加者の感想より

  • 日本と外国の食の違いに改めて驚いた。
  • アメリカの食にはなじめそうもない。
  • 南米エクアドルの食料と、日本の食糧を比較して、日本ではいかに加工されたものを食べているのかを再認識し、同時に考えさせられた。自然な姿にできるだけ近づけたいと思った。
  • 食材により、どの国、どの地域かが想像できるほど、食生活は特徴があることに気付いた。一方、食文化は一日二日で身に付いたものではなく、新しい食文化に慣れるのは大変。お互いにこのことを理解すると、相互理解の良いチャンスになる。
  • ベトナムの子のお弁当の問題も考えさせられた。
  • 自分はアメリカで生活した経験があるが、食べ物も含め、全部をアメリカの文化に合わせることはできなかった。自国の文化を捨てるということは、自分が自分を捨てることだと思う。日本にいる外国人にも、生まれ育った自国の文化を大切にするようにしてほしい。
  • (食べ物などの)違いの原因が「宗教」にある場合、どうすればよいのか、これからの課題だ。
  • ワークショップという参加型学習を通じて、「互いに主張し合い、互いに聴き合う」という基本的な姿勢が生まれつつある。

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6.実践者の観察・評価

  • 参加者の多くが大田区民大学のひとつのコースに継続的に参加しており、毎週顔を合わせるようになっていたのと、今回が2度目のワークショップだったために、始めから緊張感が少なく、グループ討議でも発言者が片寄ることがありませんでした。参加者の感想にもあるように「互いに主張し合い、互いに聴き合う」姿勢が出来上がりつつあると感じられ、心強く思いました。
  • 食文化の違いが文化の違いに通じることを、参加者が比較的早い時期に気づいてくれたのはありがたいことでした。広い視野を持つことを求めて、区民大学の多文化共生・国際理解コースに参加しようとする、参加者の前向きの姿勢が底流にあるのだと思います。
  • 二度目の寸劇で「君の家に遊びに行きたい」と言われて、ベトナム人の子どもを演じていたスタッフは、演技ではなく心に本当に温かみを感じ、思わず笑みがこぼれたといいます。参加者も拍手していましたが、異文化理解、国際協調の第一歩であろうと思います。

(報告:滝本雅章/DEARボランティア)

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