DEAR 開発教育協会

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メコン川の恵みと開発~開発の影響を受けるのは・決めるのは誰? in 名古屋(2014年4月)

目的

水から広がる学び アクティビティ20

教材『水から広がる学び アクティビティ20』の中から、ワークショップ2「メコン川の恵みと開発」の実践をご紹介します。6か国を流れる国際河川であるメコン川ですが、特にカンボジアの支流に暮らす人々の暮らしに注目します。そして、現実に進行中のダム開発について考えます。

※「メコン川の暮らしと開発」は大きく2つのアクティビティから成ります。前半では、豊富な写真とエッセイから「川の恵み」と共に生きる人々の暮らしを知ります。日本の、特に都市生活者の参加者は「川」と生活・経済がかけ離れていることに気が付く体験となります。後半では、メコン川流域で進むダム開発を、様々な立場の意見を元に考えます。教材には、八ツ場ダム開発をモデルとした「日本のダム開発」のアクティビティも収められています。

内容

「川の恵み」をブレインストーミング

1. 自己紹介(4~6人の小グループ)

「名前/所属団体(寺院)/主催団体(アーユス)とのお付き合い/縁のある・思い出のある川」の4点を紙に書き、グループ内で自己紹介をする。全ての参加者が異なる川について紹介し、川とのつながりも「川遊び・釣り・花火・土手をデート・競艇」など、多様な意見が出て、盛り上がった。

2. 「川の恵み」をブレインストーミング

グループ内で紙(A3)に「川の恵み」で思いつくものをできるだけたくさん書き出してもらい、全体に発表した。自己紹介で出たことに加えて「農業」や「水力発電」「沐浴・水葬(インドに行ったことのある参加者)」など、さらに多様な意見が出て、さらに盛り上がった。

3. カンボジアのメコン川支流の暮らしを写真とエッセイで知る

各グループに、メコン川支流のセサン川流域に暮らすノム・パニーさん一家の写真セット(17枚)を配る。写真を見ながら、家族の生活を想像する。さらに、ひとつ前のワークで使った「川の恵み」の紙に異なる色のマーカーで、写真から読み取った「川の恵み」を加筆する。新たに「洗濯・家畜への水やり・料理・飲み水・水浴び(シャワー)・漁」などの言葉が書き加えられた。その後、エッセイ「ノム・パニーさんの一日」を読む。

4. DVD『自然と私たちの未来を考える~メコン河流域と日本』視聴

『自然と私たちの未来を考える~メコン河流域と日本』(NPO法人メコン・ウオッチ)から「ムン川の経験~メコンの暮らしとダム」の前半10分間を視聴し、流域の暮らしについてさらに具体的に紹介した。
メコン・ウオッチのウェブサイトからもご覧いただけます

5. ダム開発をめぐる様々な意見

現在、メコン川流域では複数のダム開発事業が進行中で、前述のノム・パニーさんが暮らすセサン川でも計画があることを伝える。各グループに背景の説明シート「セサン川におけるダム開発」を配布し、状況を説明・確認する。その後、ダム開発をめぐる8人(正確には7人と1匹)の意見が書かれたカードセットをグループに配布。裏側にして重ね、1枚ずつめくって読みあげていく。

  • ドゥー・ウイット(農業と漁業に従事)
  • トォン・モック(農業と漁業の仲買)
  • ウク・ノーム(セサン川を守る会のメンバー)
  • チュアン・ブンティン(政府開発省職員)
  • ナカヤマ・ヒデキ(日本車部品メーカー社員)
  • リエム・チャンパン(工場の従業員)
  • メコンオオナマズ(川の中に生息)
  • チャン・ソペアック(首都に住む高校生)
「川の恵み」をブレインストーミング

6. 「暮らしに影響を受けるのは誰?」ランキング

カードに書かれた8人を「暮らしに影響を受ける」と思われる順に、グループ内で話し合いながらランキングする。多くのグループが「漁民」「農民」「メコンオオナマズ」をより影響を受けるとし、「政府職員」「日本のメーカー社員」を影響が少ないとランキングした(開発プロジェクトが失敗したら「左遷されるかも」「首を切られるかも」という意見もあった)。

7. 「ダム開発の意思決定に影響力を持つのは誰?」ランキング

次いで、カードに書かれた8人を「ダム開発の意思決定に影響力を持つ」と思われる順に、グループ内で話し合いながらランキングする。多くのグループが「政府職員」「日本のメーカー社員」を影響を持つとし、「メコンオオナマズ」「漁民」「農民」などを影響力がないとランキングした。ひとつ前の「影響を受けるのは誰?」ランキングと比較し「より暮らしに影響を受ける人が意思決定に参加できない」「現場から遠くにいる人にばかり決定力がある」といった意見が出た。

8. 「そのほかに意思決定に影響力を持つ人は?」ブレインストーミング

カードに書かれた8人以外に、ダム開発に影響力を持ちそうなアクターをあげてもらった。「資金融資・提供国の政府/市民」「マスコミ」「カンボジア/ベトナム政府」「日本を含む海外NGO(および市民)」「カンボジア/ベトナムの市民」「銀行(金融機関)」「政治家」「消費者」など、多様な意見が出た。

9. 意見交換

ダム開発は誰に利益をもたらし、誰に悪影響を与えるか、意思決定に市民はどのように参加できるのかなど、ワークショップをふり返りながら自由に意見交換をおおこなった。ダム開発だけでなく「開発」の影響を受ける人たちに十分な情報提供がされないこと、意思決定に参加する機会がないことなどの課題があげられた。また、それらの課題を克服されるために、どのような取り組みできるか話し合い、実際に知っている事例や取り組みについて情報共有した。

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事後の展開

このワークショップは、4月10・11日に開催されたアーユス春合宿in名古屋「川は銀行~メコン河と長良川のめぐみと開発~」の冒頭のプログラムとして実施されました。ワークショップ後には、神田浩史さん(NPO法人AMネット)によるレクチャー「ダム開発と長良川の河口堰」、翌日には長良川河口堰へのフィールドスタディが行われました。

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実践者の感想

教材では、ダム開発に関わる8人のカードを使った「ロールプレイ」をすすめ方としてご紹介しています。参加者は1人1枚カードをとり、それぞれの役になりきって「ダム開発計画をどうするか」を話し合います。参加者は、役になりきることで葛藤や共感を体験し、様々な立場・意見があることを知ることができます。

今回は、参加者が市民活動に関わる人たちだったので、ロールプレイではなく、「開発の影響を受けるのは/決めるのは誰か?」を分析し、さらに、開発プロジェクトの意思決定に市民が関わるとしたら、どのような方法があるのかを話し合いました。この方法は、『もっと話そう!エネルギーと原発のこと』(DEAR、2012)でもご紹介していますので、参考にしてください。(報告:八木亜紀子)

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