DEAR 開発教育協会

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Global Express 学校での実践レポート
「パリ同時多発テロ」都内私立高校での授業(2015年11月20日実施)

DEAR会員がグローバル・エクスプレスの教材をもとに実施した授業の様子をレポートします。教師の発問、生徒たちの反応など、授業づくりの参考にしてください。

 「パリ同時多発テロ」都内私立高校での授業(2015.11)+ 「これ、やってみました!」レポート(2015.12)
 「ワールドカップ」都内私立高校での授業(2006.06)
 「アテネ五輪」都内私立中学校での授業(2004.08)
 「イラク人質事件を考える」神奈川県立麻生高校での授業(2004.04)

「パリ同時多発テロ」都内私立高校での授業

実施概要

■実践:都内私立高校(地歴公民科)高校2年生
■実践日:2015年11月20日(金)5・6時間目
■生徒数:選択・政治経済(20名)4人×5グループ
■教材:グローバル・エクスプレス「第19号 過激派組織による人質事件」を応用して実践

1.導入

パリ同時多発テロについて、知っていることをあげてもらう。

2.展開

(1)事件を知る:NHKニュース映像を全員で視聴、イスラム過激派について教員から説明。
(2)「様々な意見を読み比べる」(以下掲載)を各自で読み、「最も共感できる意見」と「最も受け入れ難い意見」を選ぶ。
iPadを生徒全員に持たせているので、生徒達は各意見の発信者やわからない言葉を調べながら、じっくり考えていた。
(3)それぞれが選んだ意見をグループ内で発表・話し合い。
十人十色というくらい選ぶ意見が異なり、その後の議論は白熱。「フランスの報復は正しいか」「難民を受け入れるべきか」「どうすればテロはなくなるか」「自分がシリア市民だったら…」「イスラム国と交渉すべきか」など、様々な意見が出た。

3.振り返り

(1)各班に話し合いの内容を報告をしてもらう、いくつかの発言について全体で意見交換する。
(2)感想を書いてもらい、全体で共有する。

※時間があれば、こちらもやる予定だった。
「中東の歴史から考える」(「第19号 過激派組織による人質事件」収録アクティビティ3)
・中東の歴史カード8枚を、グループで調べたり教え合ったりしながら、年代順に並び替える。
・自分が最も気になるカードについて、グループ内で話し合う。

様々な意見を読み比べる

  1. フランスは戦争をしている。パリで起きたことは、戦争行為だ。昨晩、私は「イスラム国」が支配している(シリアの)ラッカの空爆を命じた。さらなる攻撃が必要だ。オバマ米大統領、プーチン露大統領に結集を呼びかける。「共和国(フランス)」はテロを粉砕する。共和国万歳。
    (オランド仏大統領 2015年11月16日 議会演説)
  2. 金曜の夜、君はかけがえのない命を奪った。私の人生最愛の人であり、私の息子の母の命を。でも私は君に「憎しみ」を贈りはしない。君は僕がおびえることを、街の人々を疑いの目でみることを、安全のために自由を犠牲にすることを、期待していただろう。しかし君の負けだ。この小さな男の子が一生幸せで自由であることは、君を恐れさせるだろう。なぜなら君は、彼の憎しみも得られないだろうから。
    (妻を射殺されたレリスさんのフェイスブックより 2015年11月20日 朝日新聞)
  3. テロリストに我々の思いやりを利用させるわけにいかない。気の毒に思うことより、いまは安全を優先すべき時だ。テロリストが難民に紛れて侵入できないよう確認するため、オバマ政権の「年間1万人のシリア難民を受け入れる計画」は、停止するのが賢明で責任ある行動だ。
    (アメリカ下院ライアン議長(共和党)2015年11月17日)
  4. テロリストが難民に紛れ込んでいたとの疑惑から、難民を阻止する動きが強まっている。しかし、難民の圧倒的多数は、紛争による生命の危険などから逃れるために避難している。難民を、最悪の悲劇の第二の被害者にしてはならない。
    (UNHCR/国連難民高等弁務官事務所 2015年11月17日)
  5. テロはパリだけでなく、ロンドンでも、パキスタンでも、世界のいろんな場所で起きている。テロリストの行為はイスラムの教えに反しており、それはどの宗教も同じだと思う。
    (東京都豊島区のモスクに集うイスラム教徒 2015年11月15日)
  6. 知る必要がないという「無関心」こそが、いま起きている問題を引き起こしたと言っても、過言ではありません。シリアの内戦やイラクの圧政に国際社会が「無関心」であるうちに、「見捨てられた人々」の間に一気に入り込み、勢力を伸ばしたのが今のイスラム国です。また、周辺地域では数多くの日本人が仕事をしています。日本は無関係だという立場を取るのは難しいでしょう。
    (フリージャーナリスト 安田純平さん 2015年1月31日)
  7. このような非道卑劣なテロはいかなる理由でも許されず、断固として非難します。ここに日本国政府および日本国民を代表し、フランス政府およびフランス国民の皆様に連帯の意を表明します。この困難な時に、日本はフランスとともにあります。
    (安倍晋三首相 2015年11月14日)
  8. (無人機で空爆を続けるアメリカに対して)戦争を早くやめ、地域に平和をもたらしてほしいです。 無実の子供や老人を攻撃するのが、本当に「いいこと」なのですか。自分の町が、日本のように 平和になることを心から願っています。武力では、何も解決できません。唯一の解決策は、人々 が教育を受け、平和について話し合うことです。
    (アメリカ軍の誤爆で家族を亡くし、自らも負傷したパキスタン人のナビラ・レフマンさん)
  9. (乗員乗客224名が死亡したロシア機墜落を、ロシアはIS(イスラム国)の犯行と断定)テロ実行犯の全員の素性を暴く。彼らがどこに隠れていようと、あらゆる場所を探す。地球上のど こにいようと必ず見つけ出し処罰する。
    (プーチンロシア大統領 2015年11月17日)

1.自分が最も共感できる意見 〔  〕
2.自分が最も受け入れ難い意見 〔  〕

生徒の感想

  • モヤモヤが止まらない。自分も含め、今の時代を生きている人は、これについてもっと考えなければならない!
  • 何かについて話し合う時に、今回のことに限らず無関心は良くないと思った。特にイスラム国問題では、同じ宗教団体でも色々な考えの人がいるので、知識のないまま決めつけてはいけないと思う。
  • 今回の授業を通して思ったことは、武力で解決しようとすることは良くないということなんですが、話し合いだけで解決してしまった場合、テロの被害にあった遺族の人たちが可哀そうだとも思い、何とも言えない気持ちになりました。
  • プリントに書かれている意見それぞれに共感できるところがあり、どれが正解でどれが間違っているとはっきり言えなくて、とても悩みました。
  • イスラムの人々への偏見は可哀そうだと思いました。が、テロが起こってしまったのは事実なので仕方ない、と言ってしまえばそれまでで、僕はその意見を肯定も否定も出来ません。ただ、人それぞれが主張する意見や考えに耳を傾けることが大事だなとは思いました。
  • パリ同時テロをきっかけに世界戦争が起こらないか心配です。
  • テロと空爆を繰り返すのは馬鹿らしいし、何の罪もない人々が命を奪われることは許されないことだと思う。
  • 自分の意見を発表して、それに賛同してくれる人がいたり、別の角度から見て違う意見を出してくれたりして、自分の中でテロに対しての見識が広がったと思う。また、他の人の意見を聞いてなるほどと思うなど、さまざまな意見を交換できてよかったと思う。

実践者(先生)よりひと言

授業のメインは、ダウンロードした教材をアレンジした「様々な意見を読み比べる」でした。生徒たちはそれぞれに悩み、大いに議論し、もやもやを持ち帰った人、無関心は良くない、色々な意見に耳を傾けることが大切だと思った人…。来年選挙権を得る彼らが、何か一つでも大事なことに気付けたのであれば、それだけでも良かったな、と思います。

ひとりでも多くの先生が授業を実践してくれるといいですね。
そして、子どもたちには今後の展開をよく見ておいてほしいと思います。

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これ、やってみました!(2015.12.9掲載)

この実践レポートをもとに、ワークショップをやってくださった方からレポートが届きました。

  • 日時:2015年12月上旬
  • 対象:比較的ワークショップに慣れている大人たち
  • 時間:約40分

実践事例の「様々な意見を読み比べる」を参考にワークショップを実施しました。 今回は、「共感できる意見」「受け入れ難い意見」について3人ずつのグループで話し合ったあと、メンバーを変えて5~6人ずつのグループに分かれ、A~Iの「発言」を分析、整理してもらいました。

A~Iの発言を、9枚の「カード」(A4の4分の1サイズ)にして模造紙の上に並べ、グループで話し合いながら、何らかの「視点」をもって整理していきます。マジックで線を引いたり、説明を書き加えたりして、似た考えの発言をまとめたり、相反する立場からの発言を離して置いたり…。

「共生-排除」と「具体的(即効性)-抽象的(根本的解決)」という2つの座標軸を作り、それぞれの発言がどこに位置するか考えたグループや、「テロの首謀者が、その発言を聞いてどう思うか」という視点からチャート図を作ったグループなど、いろいろな「視点」が出てきて、面白かったです。

でも、どんなにうまく整理されているようでも、よくよく考えると、何かしら見落としている(別の視点から見ると不十分な)点はあり、各グループの発表と意見交換の中でそのことに気づけたのが、いちばんの収穫だったような気がします。

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