DEAR 開発教育協会

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NGO・市民団体における開発教育に関するアンケート調査結果[2016年実施]

実施概要

NGOとJICAとの間の対話や連携を促進するために設置されているNGO-JICA協議会では、「開発教育の普及推進に向けたNGOとJICAによる今後の連携協力のあり方やその具体策を検討することを目的とした「開発教育推進のためのタスクフォース」(2016年~2017年設置)を立ち上げ、全国各地でNGOや市民団体が実施している開発教育の現状や課題、NGOとJICAの連携状況に関する実態調査を実施しました。

アンケートにご協力くださった皆さま、ありがとうございます。
ご協力のおかげで開発教育の実施状況を捉えなおすことができました。今後の推進に役立ててまいります。

3つの特筆箇所

開発教育の実施状況における3つの特筆箇所

  1. 2004年に当会が実施したアンケートとの比較において、必ずしも同じ質問ではありませんが、いくつかの変化が見られました。自団体の広報のための開発教育よりも全体としての問題意識を広める活動に重きが置かれつつあります。
  2. 開発教育を進める上で、資金やスタッフの面で組織基盤が十分でない団体が多くあります。また、成果が見えにくいため、資金調達がしにくいことも考えられます。開発教育の継続的な実施のため、教育・学習活動に対する出資に理解が求められます。
  3. 地方での実態については、回答が得られず明らかでありませんでした。そのこと自体が開発教育の促進における問題であり、本来的な開発教育の推進のためには、都市部だけでなく地方を含めた全国での実践を拡大していく必要があります。そのためにはJICAデスクの充実といった、以降に挙げられるJICA との連携における改善点について協議していく必要があります。

JICAへの意見・提案

(1)今回の結果、および2011年度の「開発教育/国際理解に係るNGOとJICAの連携強化に向けて(提言書)」等を踏まえ、引き続き以下の事項を提案します。

  • NGOとJICAの共通理解の醸成。
  • 各地域で開発教育/国際理解に関する情報共有・議論を行う地域会議の開催を積極的に支援する。
  • 適切な対応を取り合う姿勢とその励行がコミュニケーションと共に必要である。
  • 担当者の交代があっても相互信頼関係が損なわれることのないように、それまでの協議の経緯に関する引継や情報共有等を組織的に徹底していくことが必要である。
  • JICA側はNGO側の有する専門性や知的所有物を正当評価することも必要である。
  • 受託関係ではなく、対等なパートナーシップの構築。

(2)今後のNGOとJICAの連携強化に向けて、以下の事項を提案します。

  • JICAのリソースをNGOに公開する。
  • NGOの拠点との連携を密に取り、NGOのリソースをつかった研修などの組み立てをする。
  • NGOと協働して学校連携の提案を推進する。
  • 開発教育スキームのさらなる発信をおこなう。

(3)検討事項として以下の事項を提案します。

  • 外務省や文科省への開発教育推進に係る提案をおこなっていく。

アンケート調査結果概要

1.開発教育の実施状況

  • 開発教育を実施している団体は107団体のうち79団体で、全体の74%を占めている。
  • 開発教育を実施していない団体は全体の 26%で、そのうちの 36%は「開発教育に関する人材育成支援」や「学校教育との連携支援」また、「開発教育に関する助成金や補助金」などの条件があれば実施できそうだと回答している。
  • 所在地として、東京(33%)、大阪(10%)、愛知(7%)からの回答が半数を占める一方で、19の都道府県からは回答がなかった。

2.分野・テーマの傾向 ※(設問4)に該当

  • 半数以上の団体が、「国際協力」、「世界の貧困問題、子どもや教育、平和問題、生活や文化」といった分野・テーマでの活動を過去2年間で実施している。
  • 多文化共生や、国際協力の仕事(キャリア教育)での活動は、以前に比べ増えつつあり、分野・テーマの傾向に変化が見られる。

3.対象者について ※(設問5)に該当

  • 大学生対象に教育・学習活動を実施したことのある団体が83%を超えている。

4.団体での担当者について ※(設問6)に該当

  • 開発教育を実施している団体で、専任・兼任のスタッフはいないとしている団体が42%を占めている。

5.学校教育における取り組み ※(設問10-2に該当

  • 総合的な学習の時間、道徳、学活、国際理解の時間での関わりが半数以上挙げられている。
  • 「ボランティア体験活動・奉仕活動」、また、「進路指導・職業体験・キャリア教育」での関わりは以前に比べ増えつつある。

6.目的について ※設問12に該当

  • 優先的目的として、「対象者に、開発・貧困・人権・平和などの地球的課題(開発問題)を理解してもらうため」(88%)、「対象者に、地球的視野をもった市民として、地球的課題に取り組んでもらうため」(82%)といった問題意識を広めることが上位を占めた。
  • 一方で、過去に多く目的として挙げられていた、自団体の広報にあたるような「対象者に、貴団体で行っているプロジェクトを理解してもらうため」(44%)、「対象者に、貴団体で行っているプロジェクトに会員として参加してもらうため」(11%)、「対象者に、貴団体で行 っているプロジェクトに募金をしてもらうため」(6%)といった目的は上記を下回っていた。

7.問題点について ※設問13に該当

  • 開発教育を進める上で、「資金が足りない」(52%)、「『開発教育』の成果が見えにくい/評価しにくい」(38%)、「開発教育を担える人材がいない」(27%)といった問題が上位を占めている。

8.必要としている支援について ※設問14に該当

  • 「開発教育に関する助成金や補助金」(61%)、「開発教育に関する人材育成支援」(44%)「教材作成に関する支援」(43%)などの支援が、今後の開発教育をすすめるうえで多く必要とされている。

9.まとめ

本アンケートの特筆事項として、一つ目は2004年に当会が実施したアンケートとの比較において、 必ずしも同じ質問ではないが、いくつかの変化が見られた。自団体の広報のための開発教育よりも 全体としての問題意識を広める活動に重きが置かれつつある。

二つ目は、開発教育を進める上で、資金やスタッフの面で組織基盤が十分でない団体が多い。ま た、成果が見えにくいため、資金調達がしにくいことも考えられる。開発教育の継続的な実施のた め、教育・学習活動に対する出資に理解が求められる。

三つ目は、地方での実態については、回答が得られず明らかでない。そのこと自体が開発教育の 促進における問題であり、本来的な開発教育の推進のためには、都市部だけでなく地方を含めた全 国での実践を拡大していく必要がある。そのためには JICA デスクの充実といった、以降に挙げられ る JICA との連携における改善点について協議していく必要がある。

開発教育に関するJICAとの連携について

1.JICAとの連携について

全107団体のうち、半数を超える62%が何らかの連携事業を行っている一方で、38%が特に行っていない。JICAと連携しない主だった理由としては、「どのような連携ができるか分からない」こと、または「情報がない」ことに加え、「JICA からのアプローチがない」ことが挙げられる。

2.連携における成果について

(1)資金的援助、広報支援による成果

  • 資金的援助に加え、会場の提供、人的支援や人材紹介といった JICA のリソースも団体にとってはメリットとなっている。
  • 広報支援により、参加促進だけでなく、新規関心層の開拓や県外への発信にもつながっている。

(2)ネットワークの拡大への貢献

  • 民間だけでは達成されない、全国レベルや、他セクターとのネットワークの構築にもつながっている。

(3)組織強化、人材育成への貢献

  • 継続的な研修プログラムの実施による、安定的な組織運営や人材育成につながっている。

3.連携における課題と問題について

(1)国際協力推進員の交代や減少、デスクの廃止に付随する課題

  • 推進員の減少や、デスクの廃止により、開発教育の担い手不足や今後の地域での発展が危ぶまれる。
  • 担当者の交代により、開発教育関係の情報やノウハウが蓄積されない、また、つながりの途切れや信頼関係の継承が難しい。
  • 地方の JICA 拠点との連携が進んでいない。

(2)開発教育に対する認識の違い

  • 開発教育に対する理解、事業のねらいに対する認識がJICAと異なる場合がある。
  • 国内問題等のテーマについても積極的に取り上げたり、地域の現状や要望に合ったテーマ選択にも理解を求めたい。
  • なぜ民間ができることをJICAがやるのか理解できないことがある。

(3)JICA内の連携に対する意識的課題

  • 協働事業に関わる人が少数のため、JICA 全体での協働に対する意識を向上させる必要がある。
  • JICA内での開発教育に対する理解が深まるとよい。
  • 市民、現場レベルとの対等な対話が求められる。
  • 対等な関係ではなく、見下されているように感じた時があった。そのような時は一緒によいも のを作り上げようとする熱い思いもなえてしまいそうだった。

(4)講師料ついて

  • JICAの講師謝金の基準が非常に低く、講師に対して十分な謝金を出せない。
  • 講師料の単価が消費税アップにも関わらず、逆に切り下げられている。

(5)制度的な課題

  • 単年度の公示のため、持続的に波及をもたらす工夫をすることができない。
  • 予算執行のルールの変更により、連携が途絶えた。
  • 現在のJICAの枠組みでは、名義後援以上に外部の団体が関わる余地が小さい。

(6)広報における課題

  • 広報での連携ができていないことや、共通目標を立てられていない。

4.連携における課題・問題解決のための実践および要望

各団体により様々だが、実践としては継続的な対話をしていること、要望としては人的体制の拡充、推進員や担当者との継続的な関わりが望まれる傾向が強い。

  • 所属校や近隣市町などでも広めてもらうよう、JICA からも現職 OBOG に対して、さらに働きか けをお願いしたい。
  • 仕事・業務としてではなく、「教育」分野そのものに関心を持ってほしい。
  • 地域連携や開発教育に対する JICA 内での共通理解を促す。
  • 学校や教育員会へ JICA からアプローチをしたり、開発教育に取り組んでいる教員の発表の場 を増やす。
  • ODA のデータなどのリソースをシェアする。
  • NGO が自由に提案できる開発教育のスキームを実施する。
  • 東京でのグッドプラクティスを全国の拠点につなげる。
  • 『地域の NGO/NPO と JICA が共通ビジョンを達成するための協働のハンドブック』の全国的な 普及を促進する。
  • 丁寧なコミュニケーションを行うようにし、講師派遣の単価についても個別に交渉する。
  • 開発教育の意義と効果をわかりやすく見せる小冊子やウェブ等を作成する。
  • 教員 10 年者研修等に、JICA が行う開発教育支援研修の組み込みをする。
  • 外務省から文部科学省への開発教育の効果説明や参加促進のPRをする。
  • 広報面での協力ができないか模索できるとよい。
  • このようなアンケートを実施するのならば、市民レベルの声も聞き、JICA 浜松デスク廃止の撤 廃を検討してほしい。静岡県西部地域には JICA 静岡デスクの働きは皆無であり、県庁のある 静岡県中部のみでしか、開発教育は発展していなかった。そのような現状を JICA 浜松デスク が新規開拓してきたのは事実である。ぜひ JICA 浜松デスク存続を検討してもらい、必要なら ば現地に来ていただき、市民・現場レベルの話も聞いてほしい。
  • 複数年の契約にする。
  • 正規科目同様に、開発教育を各学校で行える仕組みを構築するべき。関心がある学校、教員の みが開発教育を活用する・利用する、では、急速に進む日本の地域社会、学校、職場、病院等

5.タスクフォースへの要望

開発教育の裾野の拡大のため、実践者を増やし、教育機関や他者との連携の中で、幅広く包括的に普及 させていく必要があるとの要望が多くあった。

  • 教員養成課程のある大学でも、積極的に開発教育を取り入れてもらうような働きかけも有効で ある。
  • NGO の教材開発に係る具体的提案をする。
  • 自らの活動を広い視野と他の動きとの連携の中で位置づけていくことが重要であるので、タス クフォースの議論がそういった開発教育のとらえ直しにもつながるのではないかと期待する。
  • 過去 3 年間の受講者アンケートや過年度受講者の追跡アンケート等を基に、開発教育支援の意 義と効果や課題などを「総括・提言」としてまとめているので、よければ参考にしてほしい。
  • そもそも軍事由来の用語を使うのは、個人的には抵抗がある。
  • NGO や青少年団体が実施する開発教育事業への助成金プログラムを創設する。
  • 視点を「国内」に移していることが多くなってきたことを再認識した。身の回りの衣食住など の生活の中に、世界とつながっていることがいかに多いかを知り、その先の不都合な事情を知 らずにいてよいのかとの思いが強くなってきたということである。格差が国際間だけでなく、 国内での問題も深刻化していたり、異文化との摩擦も国内に増えていることを見過ごせないと いう面がある。「開発教育」を通じて、地球の人々の幸せの姿を追い続けていきたい。

6.意見

(1)今回の結果、及び 2011 年度の「開発教育/国際理解に係る NGO と JICA の連携強化に向けて(提言書)」等を踏まえ、引き続き以下の事項を提案する。

  • NGO と JICA の共通理解の醸成。
  • 各地域で開発教育/国際理解に関する情報共有・議論を行う地域会議の開催を積極的に支援する。
  • 適切な対応を取り合う姿勢とその励行がコミュニケーションと共に必要である。
  • 担当者の交代があっても相互信頼関係が損なわれることのないように、それまでの協議の経緯に関する引継や情報共有等を組織的に徹底していくことが必要である。
  • JICA 側は NGO 側の有する専門性や知的所有物を正当評価することも必要である。
  • 受託関係ではなく、対等なパートナーシップの構築

(2)今後のNGOとJICAの連携強化に向けて、以下の事項を提案する。

  • JICAのリソースをNGOに公開する。
  • NGOの拠点との連携を密に取り、NGOのリソースをつかった研修などの組み立てをする。
  • NGOと協働して学校連携の提案を推進する。
  • 開発教育スキームのさらなる発信をおこなう。

(3)検討事項として以下の事項を提案する。

  • 外務省や文科省への開発教育推進に係る提案をおこなっていく。

NGO-JICA協議会「開発教育推進のためのタスクフォース」会議報告資料、アンケート結果

※JICA地球ひろばサイト内掲載情報へリンクしています