DEAR 開発教育協会

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震災からはじまる学び

岐阜|高校|国語・現代文

実践者 高山西高等学校 芝原靖先生
科目 2学年「現代文」(4時間)
日時 2011年5月下旬
テーマ ボランティア  エネルギー・原発  メディア  そのた 
教材 「木ヲ植エル」大修館書店『精選現代文』
副教材 5月初旬に南三陸町でのボランティア時に撮影した写真、およびgoogleの衛星写真やストリートビュー画像

ねらい

「震災」をただの「災害」による「喪失」で終わらせるのではなく、主体的に向き合うことで何かしらのステップアップができないだろうか、という模索をしてみたい。

形式

どうしても資料提示が多くなるが、できれば「話し合い」や「ワークシート」などの自己表出ができればよいと考える。

展開

1限目 「木ヲ植エル」を読み、語句の確認や内容の把握をおこなう

2限目 「前人 木ヲ植ウレバ 後人 涼シ」の意味を考える

筆者が望んでいることをくみ取るようにする。
まだ、個人での考えをまとめる時間としたいので、個別にノートに記述するかたちで進める。
考える手がかりとして次の追加発問をおこなう。
追加発問「自然とは何か」「人が手を入れることは自然破壊なのか」

次に、班に分かれて意見交換する。
ここでは、持続できる環境の継承や、その継承を文化が支えている可能性などについて考える。
自然と人工が対立しないで、共存している実例としてこの作品を考えることも可。
「自然とは何か」「環境とは何か」「人間は環境に何ができるのか。何をしてはいけないのか」

意図するところは「人間も自然の一部である。また環境とは人間との関わりで考えていくものである」。
しかし、当然、これに反する意見が続出しても、考える手立てとして有効ととらえる。
予定調和的な結論は意味がないかも知れない。

3限目 南三陸町のスライドを見せる

(1)グーグルビューの画像で、被災する前の町並みや海に浮かぶ漁船の様子
(2)被災後の衛星写真
(3)現地の様子(機械の入れないところにある手つかずのがれきなど)
(4)ボランティア活動によるがれき撤去の様子と撤去後の景色
(5)再度、被災前の写真を見せて、そこにあった生活を想像する

ここでワークシートを班別に埋めていく
・この震災で失われたもの
・失われなかったもの
・再生や復元ができるもの
・未来への希望となるもの
・自分たちが学んだこと

4限目 前時のワークシートを使って班別に発表する

例えば以下のような発言を予想している
・人間の環境は自然の中でしか考えられないものであること
・人間は協力し再建していくことができるものであること
・今まで学んできたことや思い出は失われないこと

被災した学校に勤務している教員の友人が「懐かしい未来」という表現をしていて、とても心に残っている。そのことを最後に話して授業終了予定。

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生徒の声:ワークシートへの記入の一部

この震災で失われたものは

  • 今まで当たり前にしていた生活
  • 家、車、家族、友達
  • そこの地域に住んでいた人たちの大切な家など
  • 平和な頃の町の姿

失われなかったものは

  • 森などの自然
  • 地域の人たちの「これからもがんばっていこう」と思う気持ち
  • 人の優しさ
  • 町の人たちの町を大切にする思い
  • 希望、団結
  • 人の心や感情、思い出
  • 心の中の思い出や思いやり
  • これからの生活

再生や復元ができるもの

  • 人間が作ったもの(家・道路など)
  • 住むところや町並。地域の人たちの暮らし。
  • 昔の町の姿
  • 時間はかかるけど町の姿や学校

未来への希望となるもの

  • 人、団結力
  • 今まで自分たちが営んでいた生活をとりもどす意志
  • 他の地域の人々からの支援
  • 世界中からの支援があったこと
  • 世界中で支えあっていけばなんとかできるということ
  • 復興しようという思いがあること
  • いろんな人からの温かい気持ち。復興に対する強い気持ち。
  • 復興しようとたくさんの人たちが動いていること
  • ひとりひとりが明日に向かって前進しようとする気持ち

自分たちが学んだこと

  • 自然の怖さ。自然の前での人間の小ささ
  • 自然というのは、時にものすごく人間にとって脅威になるが、その自然と人間はうまくつきあっていかなければならない。
  • 大自然の力と、助け合うことの大切さ、自分たちの住みやすいように人の手を加えて環境を作ることも大切だが、守るべき自然と共存していくことの大切さ。
  • 協力すればなんでもできる
  • いま生きていることを大切にしたい
  • 前を向いて立ち直ることの大切さ
  • 自然と人間が共存していくことの難しさ
  • 自然の奥深さ
  • 壊すのも自然なら、再生させるのも自然
  • 私たちにもできることがたくさんある
  • 報道を観ているときは「かわいそう」としか感じなかったが、災害にあった人たちがはやく笑顔にもどれるように、自分には何ができるのか、どうしたらいいのかを考えていきたい
  • あきらめない気持ち
  • 災害に対する備えの大切さ
  • 人間のすばらしさ(復興への支援など)
  • 自然による災害があるとしても、自然がなかったら生きていけない。
  • 災害の少ない環境を考えていかなければならない。
  • すべてが今まで通りにいくとは思えないけれど希望さえあれば新しいことができる

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実践者の声:DEARアンケートへの回答から

1. 震災を受けての生徒の様子

どうしても遠いところ、という意識はあるようだ。 ただ、過去に台風による水害の被害をうけた地域ということもあり、知識としてはある程度理解しているようでもある。 繰り返しの映像報道による心の傷や、収束しない原発問題などでのストレスがあるだろうとは感じているが、目に見えるものとはなっていない。

2. 震災についてどのような授業をやったか/やっていないか

自分のボランティア体験をもとにした報告のような授業をした。次に、今回の授業案をもとにした授業を進めている。

3. 授業をやるにあたっての課題

私学なので、比較的自由に取り組める。 できれば被災地の、文化や歴史などの知識があると、もっと深い授業ができるだろうなあと思っている。

4. 生徒に必要だと思う教育的な取り組み

募金活動も必要だろうけれど、何よりも現地を「理解しよう」「共有しよう」とする活動だと考える。 そして、一過的なものとしないで、継続的な取り組みが必須であると考える。 被災校との継続的な交流や相互の成長ができるような取り組みがあればいいと感じる。

5. そのほか

今回の「被災」は、現地でだけ起きているのではない。 被災地はもちろんだが、被災地以外でも目に見えない形で、心に澱をため込んでいるのではないかと心配している。

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