DEAR 開発教育協会

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震災からはじまる学び

宮城|高校|グローバル・シティズンシップ|震災から考える国際協力とわたしたち

実践者 宮城県仙台東高等学校 石森広美先生
科目 グローバル・シティズンシップ(学校設定科目)
対象者 英語科第2学年 選択者18人
日時 2011年5月16日(月)2コマ連続授業
テーマ ボランティア・支援・協力 そのほか

震災から考える国際協力とわたしたち

「震災から考える国際協力とわたしたち」のねらい

  • 東日本大震災で経験したことや感じたことを国際理解・国際協力に活かし、自らの生き方やあり方をみつめるとともに、国際理解を深める。
  • 宮城県あるいは日本が受けた世界からの支援について知り、実感をもって国際協力の重要性や国や人のつながりを理解する。また、困難な状況にある人を想い協力しようとする姿勢を育む。

学校設定科目「グローバル・シティズンシップ」とは

本校では平成22年度から学校設定科目「グローバル・シティズンシップ」(GC)を設けています。
GCの目標は、「英語で情報を得たり自らの考えを発信したりすることを通して、地球市民として視野を広げ、自覚と責任を高める。具体的には、地球市民に必要な知識・理解(公正、多様性、相互依存性、開発、平和等)、スキル(批判的思考力、交渉力、協同等)、価値観・態度(セルフエスティーム、多様性尊重、環境への配慮等)を身につける」ことです。
生徒中心の参加型授業を展開しながら、生徒たちに問題への関心を喚起し、考えさせ、課題解決能力や思考力を養成するように工夫しています。

展開

支援してくれた国をたくさん調べてきた生徒のノート

準備(宿題):海外からの支援協力をまとめる

自分の知っているあるいは調べた範囲で、東日本大震災に対する海外からの支援について、どんな支援・救援・協力があったかまとめる。また、震災前に持っていた国際協力のイメージをまとめる。

STAGE1:東日本大震災への国際支援について知ろう

  1. プレゼン準備。まとめてきた(調べてきた)支援国の数の分だけ、付箋に名前を書いておく。
  2. 付箋を持ち、一人ひとりが前に出て、自分の把握した支援内容を口頭で発表し、その後それを地球儀のその国の上に貼る。

【発表例】
「アメリカ軍が仙台空港のがれき撤去作業や滑走路の整備をしてくれました」
「タイでは市民が募金活動をして、義援金を集めてくれたそうです」
「中国から緊急援助隊が来てくれました」
「シンガポールの子どもたちが応援の歌を歌ってくれました」

STAGE2:国際協力の意義、必要性、あり方について学ぶ

グループワークの様子

1.全員の付箋が地球儀に貼られたら、そこからどんな特徴がみえるか。また、全員の発表を聞き、わかったこと・感じたことを話し合う。
【発問】
なぜ、支援してくれるのか。どんなところから支援が来ているのか。
→アメリカや韓国にたくさんの付箋が付いた。韓国や欧米の芸能人や映画スターなどからの義援金やアメリカ軍のトモダチ作戦など。 東南・南・西アジア、中南米、アフリカなどには付箋があまりつかなかった。
【発問】
付箋が付かなかった国からは、支援がなかった、あるいは少なかったのか。
→メディアリテラシーについても認識させる
【補足】
・世界130ヶ国余りから支援の申し出があった。(3月末時点)
・その中には、日本より厳しい状況に置かれている途上国がたくさん含まれている。
・政府レベル、民間レベル問わず、多様な支援があった。
・生徒からは挙げられなかった実際の事例をいくつか紹介(以下参照)。

実際の支援の事例
  • 国連ユニセフは戦後初めて日本の子どもたちのために活動を決定、1億円を準備した(例えば、宮城県女川町を支援。小学校の片付け、子どもたちへランドセル支給や読書スペース仮説図書室の開設、乳幼児検診を再開させたこと等)。
  • 国際NGOオックスファムは、妊婦や乳幼児のいるお母さん、外国人などを対象に支援している。
  • イスラエルの医療チームが宮城県南三陸町に仮設診療所を設置し、チームで医療活動にあたってくれた。
  • スリランカから紅茶が送られてきた(お国柄が出ている)。
  • 内戦中のアフガニスタンの一般市民からも募金が集まった。
  • タイのスラム街からも募金が集まった。
  • ケニアのストリートチルドレンが被災地に励ましの歌を歌ってくれたこと、等。

2.協力や助け合いの形・ODAやNGOの国際協力の存在、これまでの国際協力について考える。
【発問】
「恩返し」といって協力を申し出た国が多くあるが、それはどういうことなのか。
【発問】
日本はどのような国にどのような支援を行ってきたのか。
【補足】
ODAとは何か説明。これまでのODAによる日本の国際協力の一例をプリントにまとめ紹介(海を渡った日本の母子手帳、大津波からモルディブの住民を守った日本の防波堤、モンゴルを走る日本製バス、ペルーに生きる日本の農業技術)。

STAGE3:発展途上国の現状と私たちの暮らし

1.ライフラインがままならない途上国の現状・救援を要請できない忘れられた地域や人々の存在
【発問】
震災で全員が断水・停電を経験した。どんな工夫・苦労があったか。何を感じたか。水道や電気が復旧して蛇口から水が出たとき、スイッチを入れて電気が付いたとき、どんな気持ちがしたか。ライフラインが無い状態がずっと続いたと想像したらどうか。
【補足】
途上国、世界の8割近くを占める国々ではライフラインが整備されていない地域も多くある。水くみに行ってやっと手に入れた水を飲んで感染症などにかかる場合もある。
【補足】
日本には130ヶ国からも応援の手が差し伸べられたが、世界の人々に注目されないまま、飢えや病気、内戦で亡くなっていく人々・子どもたちがいる。このことをどう考えるか。

2.まとめと振り返り
授業を受けて今思い浮かべる国際協力のイメージをまとめ、授業の感想を発表。振り返りシート記入・提出。

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生徒の声・授業後の振り返り

  • 今まで国際協力は貧しい国への援助だと考えていたけれど、今回の東日本大震災で日本はたくさんの救援や支援を受けて、本当に幸せな国だと思うとともに、今現在も内戦がある国、ライフラインが無く苦しい思いをしている人たちが、日本のことを考え、祈り、動いてくれたことは、本当にありがたく、胸がはちきれそうな想いでした。世界のつながり、力は素晴らしいものだと思いました。
  • 私は授業中、涙してしまうくらい、言葉では言い表せないくらい感動しました。日本は本当に助けられていると思いました。私は少しでも、小さいことでもいいから、何か役に立てることをじっくり考えていき、行動してきたいと思いました。国と国は本当につながっていると思いました。
  • 授業を受けるまで、日本より貧しい国が日本を支援してくれていたことを知りませんでした。これから私たちが国際協力をするためにも、どの国からどのような支援を受けたかを知り、日々感謝の気持ちをもって生活していかなければならないと感じました。
  • 一番驚いたことは、経済が安定していない国やユニセフなどからの支援です。日本よりずっと困っている人々の支援が最優先のはずなのに、自分たちの貴重な財産を日本のために送ってくれました。私たちは支援してくれた国々に、何らかの形で恩返ししなければならないと思います。
  • 誰にも注目してもらえず、物資も来ない地域もあるのに、日本はどれだけ恵まれているのかとわかりました。日本は世界からの支援に感謝し、被災したから支援は当たり前、と思うことは、支援が行き届いていない国に失礼だと思いました。
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実践者の感想

実践者による最後のまとめ

震災を開発教育に取り入れる意義や可能性は大きいと考え、同僚にも意見を求めながら、シラバスを一部変更し、今回の授業を構想した。生徒全員が少なくとも3.11の大地震とライフラインの断絶(停電・断水・ガス供給停止等)を経験しているため(一部生徒は家屋の津波被害にも遭っている)、授業のテーマには真剣に取り組んでいた。国際理解・協力の大切さは日頃から様々な形で訴えてきたが、このときほど、実感を伴ってよく理解されたことはなかったように感じる。

今回の授業では、世界各国からの支援の輪の大きさをあらためて実感し、感動と感謝の気持ちに包まれていた様子であった。日本では、世界各国、特に隣国である韓国や欧米諸国の著名人からの義援金は大きく報道され、生徒達も知っていた。また、米軍の救援活動やトモダチ作戦などは、メディアによく取り上げられていたので、理解していた。しかしながら、途上国や、ユニセフを含む国際機関や国際NGOも大きな支援を寄せてくれていたことは全く知らず、授業で初めて知り、驚いていた。ここにメディアリテラシーを絡めることにより、授業をより包括的にすることができた。また、授業で日本がこれまで行ってきた国際協力や支援の具体的事例を取り上げることによって、各国が日本へ「恩返し」と言っている意味をようやくかみしめることができているようだった。

日本のために世界中が祈りを捧げ、多くの支援が集まる一方で、我々は世界の関心を集めることなく、静かに息を引き取る子どもたちの存在や途上国の現状を忘れるべきではない。世界130ヶ国(※)からの支援をいただいた日本。貧困地域や紛争地からも東日本大震災への募金活動がおこなわれ、主に途上国の子どもたち支援をしてきたユニセフも、宮城県の被災地の子どもたちの支援活動を展開している。こうした事実や具体的事例を授業で取り上げることによって、「震災」を超えた深みのある気づきを促すことができたと考えている。このことをどう受け止めるのか、それぞれが考えることにより、学びが生まれる。こうした事実を知った生徒達の中には、涙を浮かべている者もいた。授業では「感謝」、そして、「恩返し」の「恩返し」をしていく義務と責任を共有できたように思う。

命、協力、助け合い、つながり、絆、節電、エネルギー問題・・・震災は開発教育や国際理解に重要なテーマを投げかけ、私たちの暮らしや社会のあり方を問うている。被災地に近い学校として、これからも震災と開発教育を絡めて、生徒の心に響く教育活動を創造・展開していきたい。

※3月末時点のデータを用いて授業をした。5月末には159の国や地域にのぼっている。

DEARニュース152号/2011年8月掲載の実践事例報告を再編集して掲載しました)

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