DEAR 開発教育協会

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英国における開発教育-5 「開発教育、ワールド・スタディーズ、グローバル教育の違いとは?」

開発教育、ワールド・スタディーズ、グローバル教育の違いとは?

対談の様子

岩崎:
開発教育、ワールド・スタディーズ、グローバル教育という三者の明確な違いを日頃から意識していますか?

マーゴ:
はい、明確に!たとえば開発教育の原点には、南北の格差・分断・不公正という問題がある と言えますが、正直なところ、それぞれの違いを際立たせることにはあまり意味を感じていません。むしろ、共通の目標に向かって、三者の特長や課題を共有していくことの方が重要ではないでしょうか。

グローバル教育は、さまざまな問題や要素を部分としてではなく、ホリスティック(holistic, 全体論的に)に見ていく点が特徴的です。ですから、南北問題を例に取れば、それを「南」と「北」の問題としてではなく、アメリカの発展とサハラ以南のアフリカの貧困とが繋がっているということを解き明かしていこうとすることが大切です。その点においては、実際の現象としては異なるけれど、日本の貧困もオーストラリアの貧困も原因は共通しているということがいえます。開発教育で言えば、南北問題を貧困や開発といった問題(issues)だけではなく、権力や歴史の視座からきちんと捉え直していくことが大切です。 (*17)

グローバリゼーションはすべてを変えてしまいました。教育もそれに対抗して変わっていくべきだと思っています。ワールド・スタディーズは、当初は明確なメッセージをもっていましたが、ナショナル・カリキュラムの導入に伴い、学校教育の現場ではそのメッセージ性が薄れてしまったように思います。 グローバル教育は、根底にある経済の権力を見抜くのに、非常に有効だと考えています。

また、ワールド・スタディーズとグローバル教育はアプローチの仕方が異なります。たとえば、ワールド・スタディーズには人権問題に対する明確なアプローチが ありませんが、その代わりに、多様性(diversity)、ともに学ぶ(learning together)、ともに生きる(living together)というメッセージ を明確に持っています。グローバル教育とワールド・スタディーズは未来教育に強調点をおいていましたが、開発教育にはその視点が弱かったと思います。 もちろん開発教育は南北問題を分かりやすく分析してきましたが、東西問題は見ていませんでした。最近の「持続可能な開発のための教育(ESD)」は、気候変動や温暖化など環境教育の視点が強いように思います。

開発教育、ワールド・スタディーズ、そしてグローバル教育は互いに影響を及ぼし合ってきました。開発教育も今後、他分野からの影響を受けて変化していくと思います。 その点では、ロンドンの開発教育協会(DEA,*18)が団体名称の変更を通じて、ビジョンを明確にしようとしていることは大変興味深いです。開発教育も以前に比べてホリスティックな視点を持つようになってきたと思います。それが名称変更という具体的な事象になって現れているのだと思います。他方で、ナショナル・カリキュラムの中にはグローバル・ディメンション(Global Dimension)という概念が導入されています(*19)。しかし、それは残念な結果になったと思います。学校にアプローチするためにはよかったのかもしれませんが、ディメンションはあくまでディメンションで、表面的であり、ものごとの核心ではありません。他の分野から借用した理論で、あまり正確なものではなく、濁った水のようで、問題を明らかにはしてくれません。 こうした不十分な面を開発教育やワールド・スタディーズやグローバル教育が補っていかなければならないと考えています。

学校現場から見たグローバル教育

岩崎:
英国では、開発教育よりもグローバル教育という言葉の方が、学校の教員には受け入れられやすいのでしょうか?

マーゴ:
グローバル教育でもなかなか難しいと思います。しかし開発教育はさらに難しく、教師にはほとんど理解されないと思っています。「公正な未来に向けた教育」というのが出発点としてはよいと思っています。公正な未来とは公正なグローバル社会ということでもありますが、それでも難しい。

政府の使う「グローバル・ディメンション」はまだ受け入れられているのかもしれませんが、「8つの鍵概念」(*22)などの解説を見たとたん、難しいと感じてしまいます。「試験のための教育」ではなくて、「良い教育」をしたいと思っている教師はたくさんいます。そういった人たちは「変化を起こしたい」と考え、そのためのカリキュラム変更を望んでいます。私たちは研修を通じて、そういう教師を支援しています。財政支援があれば、数学やリテラシー教育のように研修システムを確立できます。しかし財政支援がほとんどないのです。より大きな効果をほんの少しの資金で出していかなければなりません。政府に私たちの成果を見てもらい、イニシアチブを確立していくことが必要だと感じています。

6.「日本との関わり」へ


  1. 「英国における開発教育」トップページ
  2. CGEの成り立ち
  3. CGEの転換点とは?
  4. 開発教育、ワールド・スタディーズ、グローバル教育の背景
  5. 開発教育、ワールド・スタディーズ、グローバル教育の違いとは?
  6. 日本との関わり
  7. 市民教育の現状と今後

*17:開発教育にホリスティックな視座が欠けているとの指摘は、英国の開発教育に対するマーゴの認識が示されていると思われる。
*18:英国の開発教育関係団体の全国組織。http://www.dea.org.uk
*19:2005年3月に英国の国際開発省(DfID)や教育訓練省(DfES)などは、“Developing the global dimension in the school curriculum”と題する初等中等教育向けの参考資料を共同で発行している。
*22:「地球市民」「対立解決」「多様性」「人権」「相互依存」「社会正義」「持続可能な開発」「価値と認識」の8つの鍵概念(The 8 key concepts)。


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