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多文化共生 <解説編>
「外国人=犯罪者」ってホント?~スケープゴートにされる人たち~
川上園子 アムネスティ・インターナショナル日本

解説編-「外国人=犯罪者」ってホント?  実践事例-レヌカの学び

日本では、近年治安や安全に対して不安を感じる人が8割近くにのぼるという。マスコミは外国人による犯罪の増加や凶悪化を大きく取りあげており、外国人、特にアジア系外国人イコール犯罪者というイメージが広がってきているのではないだろうか。外国人犯罪者の増加は、事実なのだろうか。これらの報道の裏にあるものは何か。そして、こうしたイメージが日本にいる外国籍の人々に、どのような影響を与えているのだろうか。

治安悪化におびえる社会

日本社会は今、「安全神話」が崩壊し治安が悪化しているという。その意識は一般市民の間でも共有されつつあり、誰もが治安に対して不安を抱くようになっている。例えば、朝日新聞は2004年1月に「治安」や「安全」について国民意識調査を実施しているが、同調査によると、「犯罪被害にあう不安」という質問について「大いに感じる」と「ある程度感じる」をあわせて78%にのぼるという結果が出た。一方政治家たちも、2003年の衆議院総選挙においてほとんどの主要政党が治安対策を争点に挙げるなど、「治安回復のための対策」を有権者にアピールしている。

その背景には、ここ数年の警察によるキャンペーンがある。警察庁は2003年8月に「緊急治安対策プログラム」を発表し、同年を「治安回復元年」とした。そして、「危険水域にある治安情勢の下、犯罪増加の基調に早急に歯止めをかけ、国民の不安を解消する」と謳っている。彼らのいう「犯罪増加の基調」の温床は、「外国人」と「少年」である。

では、本当に日本の治安情勢は、警察のいうところの「危険水域」にあるのだろうか? 「外国人」や「少年」は、治安悪化の元凶なのだろうか?

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統計からは見えない「治安の悪化」

刑法犯の認知件数と検挙人員(犯罪白書)

まず、戦後日本の刑法犯の認知件数[※1]と検挙人員[※2]の推移から参照してもらいたい。「治安悪化」説の根拠は、犯罪認知件数の増加に対し、検挙率が低下したというものである。確かに認知件数は一九七五年頃から増加している。しかし、認知件数は警察の取り締まり方針によって変わるもので、1975年以降、警察が従来は犯罪として受理してこなかった届け出も犯罪としてカウントするようになったという背景がある。また1999年の桶川ストーカー殺人事件や栃木リンチ殺人事件などに対する批判に対し、警察は告訴・告発を含む困りごと相談体制の強化を各署に指示し、また犯罪被害の申告を積極的に市民に呼びかけた。これによって2000年以降、警察が特に取り締まりを強化した傷害、暴行、脅迫、恐喝などの粗暴犯や、強姦・強制わいせつ、公然わいせつなどの性犯罪、住居侵入、器物損壊などの認知件数が急増した。一方、殺人、放火、誘拐などは認知件数に大きな変化はなく、いわゆる凶悪犯と呼ばれる犯罪の多くの検挙率は低下していない。(以上、監獄人権センター政策シリーズvol.4『犯罪は本当に増えているのか?』を参照)

一般刑法犯全体の検挙人員は長期低迷傾向にあり、この数値で見る限り、とりわけ犯罪が急増しているとか急速に悪化しているとは言えないのである。犯罪社会学の分野では、「客観的数値という面からは、治安の悪化等を論ずるのは、見当はずれ」(河合幹雄氏「安全神話崩壊のパラドックス」、岩波書店)といった考えが主流である。

では、「犯罪の温床」と警察が指摘している「外国人犯罪の急増・凶悪化」はどうであろうか。日本全体の刑法犯検挙人員に占める来日外国人の割合の推移を見てみると、過去10年間、一貫して2%前後であることがわかる。罪状の内訳についても、凶悪犯(殺人、強盗、放火、強姦)は1%を占めるにすぎず、その割合は日本人と変わらない。 また、日本全体の凶悪犯の検挙人員に占める「不法滞在外国人」の割合も2%程度であり、最近四年間でも減少傾向にある。したがって、「外国人犯罪」が急増・凶悪化したという証拠は、統計からは見当たらないのである。

ちなみに「外国人犯罪」と言われるものの中には刑法犯とは別に特別法犯が含まれているが、外国人の特別法犯の八割は入管法違反、つまり日本国籍者には適用のないものである。入管法違反も法務省や警察の取り締まり方針によって左右されるもので、特別法犯の増加をもって外国人の犯罪が急増・凶悪化したと主張するのは見当違いである。

※ 1 認知件数:警察が被害届を受理した件数
※ 2 検挙人員:「検挙」とは、「犯罪について被疑者を特定し、送致・送付または微罪処分に必要な捜査を遂げること」。検挙人員とは、あくまでも被疑者を表わすものでしかない。

日本全体の犯罪検挙人数における来日外国人の割合の推移(犯罪白書)
来日外国人犯罪検挙推移(犯罪白書)
2003年度の外国人の刑法犯の罪状内訳(犯罪白書)

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メディアが作り出す不安感

残念ながらマスコミは、統計の細かい検証や批判的な考察も何らないまま、警察による「治安悪化」キャンペーンに追随していると言わざるを得ない。警察が作り出したキャンペーンの枠を超えられないマスコミは、「治安悪化」の原因を追求すべく、警察が指摘する「犯罪の温床」である外国人(と少年)を盛んに報道するようになった。

2004年3月、警察による「外国人犯罪」の統計と分析を報道した全国紙の見出しを見ても、「来日外国人の犯罪最多」(朝日新聞)、「外国人犯罪 検挙23%増 最悪に」(毎日新聞)、「外国人犯罪 最悪」(読売新聞)といった具合で、これだけを読むと、いかにも日本社会で「外国人犯罪」が溢れているような印象を受ける。また、主要全国紙である読売、朝日、毎日は、2002年から今年にかけて、治安をテーマとした特集を次々と組んだ。2004年4月に朝日新聞が「にっぽんの安全」と題した特集の中でも、二面にわたって大々的に「外国人犯罪に不安増加」として外国人犯罪を取り上げている。

こうした一連の報道は、一般の人びとの「体感治安」を悪化させる結果になっている。つまり、冒頭で紹介した朝日新聞社の国民意識調査のように、自らの体験や被害は別として外国人や少年の犯罪が増えていると「感じる」人が増えているのである。警察は、「国民の体感治安が悪化している」から日本の安全を回復せねばならないというキャンペーンをさらに展開し、マスコミ報道がまたそれに反応する…。そこにあるのは、不安の増殖作用である。このような日本社会の風潮の中で、ターゲットとされてしまった外国人、とりわけアジア、アフリカ系の人びとは今、これまでにない外国人嫌悪(ゼノフォビア)と排外主義に直面している。

都内では、「不審なアジア系外国人を見かけたらすぐ110番」といった、町内会や警察署による防犯チラシをよく見かけるようになった。文京区菊坂町には、「犯罪は、見てるぞ、撮ってるぞ、知らせるぞ」の日本語に中国語の訳がついたチラシがあちらこちらに掲示されていたが(2004年6月)、明らかに中国人に対する警告であることがわかる。海外で「日本人風アジア人を見かけたら通報を」というチラシを見かけたらどんな思いがするか、そうした想像力のかけらも感じられない。

政治家や公務員、テレビのコメンテーターなどの暴言も枚挙に暇がない。

  • 「実際はみんなこそ泥。みんな悪いことやって帰るんです」(2003年11月2日、松沢神奈川県知事の発言)
  • 「…国内には不法滞在者など、泥棒や人殺しやらしているやつらが100万人いる…」(2003年7月12日、江藤隆美衆議院議員の発言)
  • 「…民族的DNAを表示するような犯罪…」(石原慎太郎東京都知事、2001年5月)
  • 「外国人犯罪は原始化している」(2004年8月24日「スーパーモーニング」)
  • 「外国人犯罪者は人殺しの訓練を受けてきている」(2004年7月、石川県金沢市の小学校の父兄向け非行防止講演会の場で)
これらの発言は、無知という以前に彼らの人種差別意識からきているが、残念ながらマジョリティである日本人社会はこれらを無自覚に容認している状況といえよう。

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東京都による「不法滞在者」取り締まり強化

「不法滞在者」が犯罪の温床になっていると声高に叫ばれる中、東京都は2003年10月、法務省入国管理局、東京入国管理局、警視庁とともに「首都東京における不法滞在者外国人対策の強化に関する共同宣言」を発表し、今後五年間で「不法滞在者」数を半減させることを宣言した。これ以降、駅構内でも警察が目を光らせるようになり、それこそ電車を下りた途端に捕まるといったケースも出てきた。さらに法務省入国管理局は2004年2月16日、「不法滞在等の外国人情報」の受付を同局ホームページ上で開始した。当初そのホームページには通報者が通報動機を選択する項目があり、その中には「不安」「近所迷惑」などの項目が並んでいた。これらは単なる感覚であって、違法性とは何ら関係がないことは言うまでもない。NGOの相次ぐ批判によって、後に法務省入国管理局はこれらの項目を削除した。

「不法滞在者」と呼ばれる人びとのほとんどは、過酷な労働条件の現場で長年真面目に働いてきた。彼・彼女らが働く現場は、日本人従業員がなかなか来ず、もはや移住労働者なしではやっていけないのが現状である。日本経済の中で需要があるにもかかわらず、「単純労働者は受け入れない」という政府の建て前論の中で生まれたのが「不法滞在者」と言えるだろう。

彼・彼女らは今、休みの日は一歩も外に出ず、いつ捕まって強制送還されるのかと怯え暮らす毎日である。強制送還される人びとの中には、すでに日本で生活基盤を形成し、日本国内で生まれ育った子どもを持つ家族も多い。ある日、生徒が学校に来なくなったと思ったら入管に両親とともに収容されていた、というケースも各地で報告されている。

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子どもたちに与える影響

「外国人犯罪」に対する冷静な分析を欠いたセンセーショナルなマスコミ報道や無責任な政治家・芸能人たちの発言は、先に述べたように「体感治安」を悪化させ、「外国人と暮らすのは怖い」という漠然とした不安を市民に植え付け、さらには「なんであんな連中が日本にいるんだ」という排斥の意識につながっていく。

そうした大人社会に蔓延する「不安シンドローム」は、子どもたちの中にも影を落としている。東京大学の大学院生である趙さんは、外国人犯罪一辺倒の報道によって、マイノリティの児童・生徒が傷つき、同じ出自の大人に対して負のイメージを抱かされるようになると指摘している。差別される側にとっては負のイメージは大人にとどまらず、同じ出自の民族や国、さらには言語に対するものへと拡大していくかもしれない。同時に、マジョリティの子どもたちは、移住労働者や来日外国人について勉強しようと思う前に、「日本人に生まれてよかった」という優越感を持つようになり、外国人の同級生に対して傲慢な態度を見せるようになるという(「先生、なんで中国人は悪いことばっかりやるの?」趙衛国、『外国人包囲網』現代人文社より)。

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排外主義を乗り越えるために

「安全」というスローガンを御旗に、ゼノフォビアは確実に拡がっている。しかしもちろん、異文化を知り、共に生きていきたいと思う人たちも大勢存在する。そう願う私たちは、まず、政府による「治安悪化」キャンペーンに異を唱える必要がある。冷静に情報を読み取り、「外国人が怖い」と言っている周囲にその情報を共有し、マスコミの過剰な報道を批判し、政治家やテレビコメンテーターの暴言を許さないでほしい。

来日外国人に「日本社会に馴染んで」という前に、彼・彼女らが尊厳を持って暮らしていける環境を整えていくべきではないだろうか。

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DEARニュース112号(2004年12月)特集より一部再編集のうえ掲載
※ 著作権は(特活)開発教育協会が保有しています。無断で転載や複製を行うことを禁じます。

■川上園子(かわかみ・そのこ)
アムネスティ・インターナショナル日本職員として、現在「ストップ!女性への暴力」と多文化共生キャンペーンを担当。多文化共生キャンペーンでは、とりわけ「外国人犯罪」とそれにともなう排外主義に焦点をあて、他団体と協力して活動している。1997~2001年まで日本インドネシアNGOネットワーク事務局長。インドネシアの人権問題や、日本国内の外国人研修生の人権問題についても活動を続けている。共著に『まやかしの外国人研修制度』(2000年、現代人文社)、『外国人包囲網~「治安悪化」のスケープゴート』(2004年、現代人文社)がある。

社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町2-2共同ビル(新錦町)4F
TEL:03-3518-6777 URL:http://www.amnesty.or.jp/

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