DEAR 開発教育協会

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温暖化 <解説編>
世界が直面する地球温暖化問題
平田仁子 気候ネットワーク

昨年の日本は、とにかく異常気象が多かった。記録的な猛暑にはじまり、福井・新潟の集中豪雨、大型台風の10回もの大陸縦断など。日常的な会話の中でも、地球温暖化が進んでいることが普通に取り上げられるようになっている。これは人災なのだろうか。地球温暖化はどこまで深刻なのか、原因はどこにあるのか、そして、どうすればこれ以上の被害を回避できるのか、考えてみたい。

地球温暖化はすでに起こっている

干ばつによって作物が作れなくなった土地-タイ

人類は産業革命以来、石炭や石油などの化石燃料を利用することによってエネルギーを大量に消費し、文明を発展させてきた。今日の先進国の経済的な豊かさは、まさに“エネルギー大量消費”が作り上げたものだと言っていい。しかしながら、それに伴って放出されるCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスが地球を暖め、今日の地球温暖化問題を引き起こすこととなった。

過去100年に地球の平均気温は0.6℃上昇している。これは、すでに記録的なスピードで温暖化が進んでいることをあらわしている。さらに驚くべきことは、このままいけば今後100年には、地球の平均気温が最大5.8℃まで上昇すると予測されていることである。これは、人類が経験したことのない地球環境の激変を意味するものであり、この気温上昇が引き起こす影響は、固有の生態系の絶滅(動植物、海洋生物など)、海面上昇による島国の消滅、さらには、降雨量の変化が引き起こす水資源の枯渇や食糧危機など、計り知れない規模・範囲で地球上の生物の生きる基盤を脅かすものとなる。21世紀の最も深刻な課題のひとつといわれる地球温暖化問題の解決は、人類にとって緊急のものとなっている。

<写真>干ばつによって作物が作れなくなった土地-タイ

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責任は先進国に、被害は途上国に

地球温暖化問題は、南北問題と深く関わる問題でもある。
今日起こっている地球温暖化は、これまで地球資源を浪費して豊かさを享受し、CO2などの温室効果ガスを大量に排出してきた先進国に主な原因がある。これに対し、途上国は先進国に比べると人口一人当たりの排出量はずっと少なく、地球温暖化への責任は小さい。しかし、温暖化の被害は、島国などの途上国の方がより大きく受けてしまう。途上国は資金や技術などが不足していることから、被害に対して脆弱であるという問題も抱えている。

先進国が引き起こした地球温暖化は、途上国に不公平に襲いかかり、既に顕在化している南北問題をいっそう悪化させる要素を持っている。

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気候変動枠組条約に示された南北の公平性の理念

地球温暖化を防止するためには、CO2の排出量を1990年レベルから60~80%削減しなくてはならないと考えられている。そうしなければ、温室効果ガスの濃度が今後も引き続き上昇し、それに伴う気温上昇が止められないためである。これは現代社会に生きる人類の営みに関する“常識”の大転換を意味する非常に重い課題である。

1992年に採択された国連気候変動枠組条約は、右に述べたような地球温暖化に対する責任の差や対応能力の格差に配慮して、各国間の公平性の概念を「共通だが差異ある責任」という基本原則に定めている。この原則に基づき、条約は、先進国がまず先に地球温暖化対策をとること、途上国に対して温暖化対策に必要な技術や資金や気候変動の悪影響に適応するための費用を支援することなどを定められている。

1997年に採択され、先進国に温室効果ガスの削減義務を課している「京都議定書」もまたこの原則に基づいている[※1]。京都議定書は、増え続けるCO2排出を野放しにしていては世界が持続不可能であることを全世界で認識し、具体的な削減を求めたという点で意義深いものである。もちろん、温暖化防止には60~80%の削減が必要だとされる中で、京都議定書の定めた5%程度の削減目標は小さな一歩でしかないが、まずは先進国がこの唯一の国際合意を確実に実施し、より大きな取り組みに向かっていくことが求められて いるところである。

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温暖化防止のための途上国支援の具体化

高波によって海面が削られる海岸-太平洋の島、サモア(数年前までここから80メートル先まで陸地であった) 高波によって海面が削られる海岸-太平洋の島、サモア(数年前までここから80メートル先まで陸地であった)

気候変動枠組条約や京都議定書は、当面の取り組みとして途上国に対しては削減を義務付けてはいないものの、途上国に関連する事項も盛り込まれている。

1.途上国支援のための3つの基金

温暖化対策に関する途上国への支援の枠組みとして、三つの基金が設置されている。一つ目は「気候変動特別基金」と呼ばれ、途上国が地球温暖化の被害への適応や、エネルギー・運輸・産業・農業などの分野に関する活動に資金を供与するもの、二つ目は「後発開発途上国基金」と呼ばれ、特に被害への影響が大きい後発開発途上国(LDC)に対して資金を供与するもの、そして三つ目は「適応基金」という、地球温暖化の被害への適応策を支援するための資金を供与するものである。 これらはいずれも、途上国が受ける被害に対して先進国が必要な資金をきちんと提供し、途上国自らがCO2排出を増やさない方法で発展することを支援することが基本的な考え方となっている。

2.クリーン開発メカニズム(CDM)

もう一つ、途上国に関わるもので、京都議定書のもとに作られた「クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism(CDM))」という仕組みがある。 これは、先進国が途上国において温暖化対策事業に投資し、そこで生じた削減分を先進国が京都議定書の数値目標を達成するために利用できるというものである。例えば、日本企業がインドにおいて風力発電事業を実施した場合、この事業がなければ環境に悪い石炭火力発電所が出来たと想定すればいくらかの温暖化対策を進めたことになる。CDMでは、インドで生じた削減量を算定してクレジットを発行し、日本の削減義務の達成のために利用することができるわけである。

このような考え方は、途上国で行う対策の方が先進国内で行うよりも安くできることなどからアメリカなどが主張してきたもので、制度としては、率先して対策を取るべき先進国が自らの削減努力を怠る「抜け穴」になるとの反発が途上国から強くあったものであり、その危険性・懸念は未だにぬぐいきれていない。

しかしながらCDMは同時に、途上国の持続可能な発展を達成することも目的のひとつに定めている。CDMが、環境面からも社会・文化的な側面からも適正で持続可能な技術が導入される仕組みとして発展していけば、途上国にとっても地球温暖化防止にとっても意義深いものとなる可能性もある。CDMはようやく動き始めた制度であり、先進国が国内対策をさぼったり、望まれない技術を一方的に押し付けたりするツールとならないよう、公正な監視の下で慎重な運用を行い、地域住民のニーズにあった事業が展開されることが求められている。

<写真>高波によって海面が削られる海岸-太平洋の島、サモア(数年前までここから80メートル先まで陸地であった)

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直面する課題―アメリカの離脱、進まない先進国の対策

気候変動枠組条約や京都議定書は、当面の取り組みとして途上国に対しては削減を義務付けてはいないものの、途上国に関連する事項も盛り込まれている。

問題は、これらに基づいて温暖化対策が順調に進んでいるのかということである。あいにく実態は、否である。その筆頭はアメリカの対応である。ブッシュ政権は地球温暖化問題には消極的であり、2001年には京都議定書からも離脱した。アメリカのCO2の排出量は世界の4分の1を占めており、地球温暖化への責任が最も大きい国と言えるが、現在も排出量を大幅に増やしているが[※2]、削減する意志は一向に見られない。最大の環境破壊である戦争への批判にも耳を貸さないブッシュ政権下において温暖化防止への実質的な取り組みを求めることは容易ではないが、この身勝手を容認することは地球環境の崩壊を意味するだけに、全世界的な働きかけを強めることが求められている。

さらに、他の先進国でも具体的なとりくみが進んでいないことが指摘できる。顕著な例が日本である。日本は京都議定書に参加し、一応の温暖化対策を取っているが、CO2の排出量は一九九〇年比11.2%も増加しており、増加傾向に歯止めがかかっていない。名ばかりの温暖化対策で、効果のある対策が取られていないためである。

今後は、中国・インドを始めとしたアジア地域を中心に途上国での排出が急増すると考えられ、途上国もCO2の排出を増やさない方法で発展していくことが求められるが、未だ先進国の努力が見えない中で、途上国に同等の努力を求めていくことは公平性の観点からも難しい。前述の基金の運用もスムーズにスタートしておらず、途上国の不満は高まっている。

温暖化防止は、一定の制度的枠組みは整っているものの具体的な行動はまだ進んでいないと言える。今後、途上国を含む世界全体でCO2削減を進めていく必要性からも、先進国がまず行動し、目に見える成果を示すことが急務になっている。

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私たちに出来ること

化石燃料に代わる発電として注目される風力発電

私たちに出来ることは何だろうか。まずは、私たち自身を取り巻く環境について知ることから始めることだ。
日本の排出量が増え続けているおもな原因は、家庭の家電機器や冷暖房の利用の増加、クルマの利用の増加、オフィスや娯楽施設などでの電気の利用の増加にある。そこから私たちのライフスタイルの変容ぶりが見えてくる。家庭内を見わたせば、エアコンやTV等の機器は、ここ十数年で倍増した。また、一世帯が所有する車も平均で二台近くに上り、移動や旅行、通勤でもバス・鉄道・自転車ではなく車を利用する人が増えている。さらに娯楽施設については、エネルギー消費に関して意識を持って運営しているケースは皆無に近いかもしれない。国や企業も、無駄な公共事業や、大量消費が前提のモノ作りによる経済発展からの転換を図れず、エネルギーの多消費を続けている。世界各国から運ばれる木材や食糧の輸入にかかるエネルギーも無視できない。

こうした実態を客観視した上で、豊かさを求めて発展を願う途上国が多数ある中で、地球資源をアンバランスにむさぼり続けながらこれらの行動を今後も継続していくことが先進国の私たちにとって妥当なのか、足元から見直す必要がある。
具体的に出来ることは、個人や学校でエネルギー利用を把握し、省エネを図るという身近な行動から、地域レベルでの公共交通の利用促進やゴミの減量への取り組み・コミュニティ間の情報の連携、さらに経済・社会のあり方の転換への問題提起まで幅広い。こうした様々な主体・地域での動きの広がりは、国や政治を担う人々の既定の常識を覆していくためにも重要だ。

地球温暖化問題を考えることは、世界における日本の役割や、日本人の豊かさのあり方を問い直すことを提起するものでもある。国際的な視野を備え、新しい発想と先見性を持って行動する人材をはぐくむことが極めて重要な課題になっていると言えよう。

<写真>化石燃料に代わる発電として注目される風力発電

※1: 目標は先進国全体で2008~2012年の間に1990年レベルから5.2%削減をするものとなっており、各国ごとの数値目標は、日本は1990年比6%削減、EUは8%削減などと異なっている。
※2: 2002年の排出量は1990年と比べて13.1%増加している(気候変動枠組条約事務局データより)。

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DEARニュース113号(2005年2月)特集より一部再編集のうえ掲載
※ 著作権は(特活)開発教育協会が保有しています。無断で転載や複製を行うことを禁じます。

■平田 仁子(ひらた きみこ)
NPO法人 気候ネットワーク運営委員
1970年生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。96年に退社、渡米。米国環境NGO「Climate Institute」で地球温暖化に関する活動に携わる。帰国後、98年6月より気候ネットワークに参加。NGOの立場から、国内外の地球温暖化に関する政策研究・政策提言・情報提供などを行う。共著『よくわかる地球温暖化問題 改訂版』(気候ネットワーク編・中央法規出版)
気候ネットワークは、国内の地球温暖化問題に取り組む約160の団体、600の個人が参加する環境NGO。
URL:http://www.kikonet.org/

■参考図書
『よくわかる地球温暖化問題 改訂版』中央法規出版、2000年

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